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河童から”オッケルイペ”まで 古今東西の妖怪が大集合『怪しくゆかいな妖怪穴』

61lkABSB8rL._SS500_.jpg『怪しくゆかいな妖怪穴』
(毎日新聞社)

「高知県香南市の山の中には、『笑い男』という妖怪がおったそうな。ある役人が山へ狩りに行こうとすると、村人に月の1日、9日、17日は、笑い男に会ってしまうから、やめたほうがいいと言われた。けれど、役人は村人の言うことも聞かず、家来をつれて山の中へ入ってしまった。すると、どこからか笑い声が聞こえて、役人を指さしてゲラゲラと笑っている。しかも、その声はだんだんと高くなり、まわりの石や木が笑っているように見えはじめ、そのうち風や川の音までもが大笑いしているようにひびいた。役人たちは大あわてで逃げ出したが、その笑い声は耳にこびりついて離れず、死ぬまでずっとその笑い声に悩まされたのだった」(本文要約)

 これは、『怪しくゆかいな妖怪穴』(毎日新聞社)中で紹介されている「笑い男」のエピソード。

 本書は、毎日新聞社が発行する「毎日小学生新聞」にて連載中の、「妖怪穴」の記事をまとめた妖怪図鑑のような本で、妖怪100種類を紹介している。

 有名どころの河童、座敷わらし、鬼、のっぺら坊、ろくろ首などに始まり、沖縄に現れるイタズラ好きの”キジムナー”や、北海道のアイヌに伝わる、強烈なオナラをして人間にかがせるだけの”オッケルイペ”など、個性豊かな妖怪まであれこれ登場している。 

 また、同じ名前の妖怪でも古今東西各地で特色があり、性格や行動がまったく違うこともある。例えば、人間とは思えないほど美しい”山姫”。主に東北から九州地方の深い山に現れるとされており、岡山県では気に入った人に宝物をプレゼントしてくれるいい妖怪だが、鹿児島県垂水市では、吸血鬼のように生き血を吸う、と恐れられている。

 節分や大みそかなど、特別な夜になると現れる”夜行さん”は、目が1つしかない鬼のような妖怪。馬に乗ってどこからともなく現れる、秋田県のナマハゲがその代表例だ。なぜか、夕食のことを話題にしている家があると、窓からけむくじゃらの手を差し込んだり、よくわからない奇妙なものを投げ込んだりしてくる。

 けれど、徳島県三好市では、お願いをすれば何でもくれる鬼の王様のような存在で、香川県吉野川の下流から香川県東部にかけては、首のない馬のことをそう呼んでいるのだという。

 本書には、こうした妖怪紹介のほかに、「妖怪とは何か」「妖怪の分類」「妖怪の歴史」など、妖怪の秘密を解く「妖怪のひみつ」コラムに加え、”お化けは夏だけ出るの?”など、妖怪に関する素朴な疑問に答える「妖怪なんでも質問箱」コーナーも掲載されていて、読み応えもバッチリ。子どもでなくても十分楽しめる。

 妖怪の研究は、一般の人たちが伝えてきた風習や信仰、民話などから、先祖の生活や文化の歴史を勉強する民俗学のひとつ。日本人がかつて何をおそれ、どんなことに注意し、生活してきたのかが見えてくるはずだ。
(文=上浦未来)

●村上健司(むらかみ・けんじ)
1968年、東京生まれ。フリーライター。妖怪探訪家、全日本妖怪推進委員会・世話役。幼いころから妖怪に興味を持ち、全国の妖怪伝承地を取材。主な著書は、『京都妖怪紀行』『日本妖怪散歩』(角川書店)『日本全国妖怪スポット(全四巻)』(汐文社)『手わざの記憶』(中央公論新社)のほか、水木しげる氏との共著『日本妖怪大事典』(角川書店)、京極夏彦・多田克己との共著『妖怪馬鹿』(新潮社)などがある。

●宇田川新聞(うだがわ・しんぶん)
1971年、東京生まれ。木版画などの作品で、雑誌の挿絵や書籍の装画を多く手がける。主な著書に『ニンニクの絵本』(共著、農山漁村文化協会)『木版画手習帖』(池田書店)がある。

●天野行雄(あまの・ゆきお)
1970年、岡山生まれ。妖怪造形家。アートユニット「日本物怪観光」を主宰。イラストや立体作品など日本各地の妖怪を紹介している。『人工憑霊蠱猫』(講談社)文庫シリーズの装画を担当。

怪しくゆかいな妖怪穴

うへへへへ。

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最終更新:2013/09/09 17:31
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