宮根誠司に隠し子!でも……”芸能人を潰さないスキャンダル報道”の在り方
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
第1位
「スクープ独占告白 宮根誠司(48)に隠し子!」(「女性セブン」1月19・26日号)
第2位
「宮崎あおい衝撃の『不倫疑惑』相手は超有名ジャニーズアイドル」(「週刊文春」1月5・12日号)
第3位
「首都厳戒 山口組VS関東連合『新時代の抗争』全内幕!」(「週刊アサヒ芸能」1月12日号)
年末年始の合併号は残念ながら、この時期らしい華やかな記事が見当たらなかった。わずかに「ポスト」がAKB48のクリアファイルを袋とじでつけたのが新年合併号らしく感じられただけだった。
子どもの頃、新年号というと近くの本屋へ飛んでいき、本屋のオヤジさんにハタキで叩かれそうになるまで、迷いに迷って1冊を選ぶときのワクワク感は忘れられない。
付録は雑誌の華であった。宝島のブランド品でなくていいから、こんなのがほしかったんだという夢のある「付録」をつけることを考えてみたらどうだろう。
考えればいくらでもあるはずだ。「フライデー」ならAKB48前田敦子がつけている香水の香り付き等身大ポスター。「現代」なら立川談志師匠の手拭い。「ポスト」なら小沢一郎のサイン入り色紙(笑)。
さて1月7日に韓国映画『哀しき獣』を見た。監督は『チェイサー』のナ・ホンジン。
「主人公のグナム(ハ・ジョンウ)は、中国・延吉に住む朝鮮族のタクシー運転手。生活苦の中、借金取りに追われているが、韓国へ出稼ぎに送り出した妻とは音信不通の上、賭け麻雀で大負け。そこに取引を持ちかけてきたのが、殺人請負業者のミョン(キム・ユンソク)。ソウルに行き、ある男を殺せば、借金を帳消しにするという。うまくいけば妻も見つけて、やり直せる。グナムは密航船で黄海を渡って韓国に入るが、待っていたのは、さまざまな黒い思惑がうずまく世界。罪をかぶせられて警察から追われる身となり、ミョン、そして標的を狙っていたもう一人の男、テウォン(チョ・ソンハ)からは、命までも狙われる」(読売新聞1月6日)
うらぶれた延吉や韓国の裏町がいい雰囲気を出している。徹底した暴力と血しぶき、迫力あるカーチェイス。これぞフイルムノワールの傑作である。
こうした映画を日本の作品で見ることができなくなって久しい。かつては『仁義なき戦い』や『仁義の墓場』などの深作欣二監督作品、一連の『昭和残侠伝』はヤクザの世界を素人衆に垣間見せてくれた。
めったやたらに人を殺す映画ばかりつくってきたビートたけしも、最近はバイオレンス度が低くなってきている。
昨年話題になった「暴力団排除条例」の以前から、ヤクザを賛美したり暴力を肯定するような映画は自粛するようになってきている。
新宿・歌舞伎町が石原慎太郎都知事のおかげで殺菌されたような無味乾燥な街になり、浅草も錦糸町も家族揃って遊べる街になってしまった。
ヤクザや暴力団関係者、その周辺の愚連隊(懐かしい言葉だね)が一人もいなくなったわけではない。彼らとて生きていかなくてはならない。いまでも多くのバーや飲食店が上納金を彼らに召し上げられ、売春やクスリは大きな収入源である。だがフツーの人たちは、何か事件でもない限りその存在を忘れて暮らしている。すぐ近くに彼らが生息しているのにだ。
暴力団の情報を知りたければ「アサヒ芸能」「大衆」「実話」を読めばいい。警察寄りではない暴力団の実態が時にはリアルに描かれている。
今週の第3位は「アサ芸」のそんな記事である。新聞やテレビでも報じられたが、昨年12月14日午前2時50分、六本木の雑居ビルにあるキャバクラ店で惨劇が起きた。
ジャージーやダウンジャケットを着たラフな格好の男たちが約20人乱入してきて、店のウイスキーのボトルなどを手にして、奥にあるガラスに囲われた席にいた4人の男をめった打ちにしたのだ。
被害者は山口系の幹部3人と極真連合会の元組員。3人は脳挫傷で意識不明、外傷性くも膜下出血、骨折などの重傷だった。
捜査関係者によると、六本木の路上でのトラブルが原因だったようだが、それにしてもすさまじい襲撃である。
襲ったのは「関東連合」と「怒羅権(ドラゴン)」といわれているが、住吉会系の組員も数人いたことがわかり、すわ山口組が抗争に突入するかと厳戒態勢が敷かれたという。
しかし12月19日に住吉会系組織のトップが詫びを入れ、和解条件を提示したことで話し合いに動いているようだと編集部は見ている。
ヤクザ同士では話がついても「関東連合」や「怒羅権」のような愚連隊とはどうなるのか。
「関東連合」がクローズアップされたのは2010年1月に起きた市川海老蔵暴行事件だ。それ以外でも元横綱朝青龍の暴行事件、押尾学の麻薬譲渡事件、上原美優の自殺などでも、ここの影がちらついているといわれる。
「関東連合」は1970年代に東京の複数の暴走族で結成された連合体だったが、最近世間を騒がせているのは90年代に不良少年だった30代から40代の関東連合OBたちだと、事情に詳しいジャーナリストが語っている。
彼らはクラブに遊びに来た上場企業の社長を美人局でハメ、大金を脅し取ったりして、実業家に転身して成功を収めている連中もいるそうだ。その連中に面倒を見てもらっている後輩たちが群がっている集団なのだ。
「怒羅権」のほうは帰国した中国残留孤児の2世3世が結成した愚連隊。最近では残留孤児とは関係ない日本人もメンバーにいるそうだが、その残忍さは相当なもののようだ。
こうした組織として不透明な愚連隊グループは、「暴対法や組織犯罪処罰法といった法律が成立していく90年代以降に、関東連合をはじめとする愚連隊が増長していった点は見過ごせない」(アサ芸)。こうした愚連隊のややこしいのは、組織自体が流動的で責任者の所在もハッキリしないことだ。
山口組も関東の組織も抗争厳禁の方針を打ち出しているのだから、報復はしにくいだろうと広域組織関係者が話している。
新時代なのかどうかはわからないが、警察に追い詰められている広域暴力団と、それをいいことに傍若無人にふるまう愚連隊グループを、警察はどう取り締まっていくのか。このままでは市民が巻き添えを食う危険性はますます高まってきている。そう思わざるをえない。
第2位は文春の宮崎あおい(26)「不倫疑惑」報道である。
年末に高岡蒼佑(29)と離婚した宮崎だが、その裏にジャニーズアイドルとの「不倫」があったというのだ。
語っているのは高岡の知人で、彼が所属するプロダクションの元社員。離婚を切り出したのは宮崎のほうからで、11月上旬、六本木の中華料理屋で「もう無理だよ……」と、やり直すつもりがないことを告げたという。
その後、離婚届が郵送されてきた。だが高岡は、自分名義で契約している携帯の支払い明細を見て「ある特定の電話番号」と頻繁に通話していることに気がついた。
高岡は意を決して電話をかけてみたが、相手は名乗ろうとせず「何か誤解されていませんか」と繰り返すだけだった。
高岡が相手の正体を知ったのは12月6日の夜。会いたいという高岡の申し出に相手がが応じて、都内の会員制のバーで会ったという。知人がこう話す。
「程なくして現れたのは、ニット帽に黒縁メガネをかけた、V6の岡田准一さん(31)だった。高岡は、さすがに岡田さんが来たことに驚いた様子でした。岡田さんは、高岡と宮崎の結婚式にも来ていましたからね」
始めは相談を受けていただけだと弁明していた岡田だったが、高岡が明細を突き付けると観念して謝った。
「高岡が彼の携帯電話を確認すると、そこには二人の親密さを示すメールのやりとりが残されていました。岡田さんから宮崎さんに送った〈今温泉に来てるよ〉というメールに対し、彼女が〈私も行きたい。また一緒に入ろうね〉と返していたのです」(知人)
岡田は映画『天地神明』(今年公開)で宮崎と夫婦役を演じている。岡田は平謝りで、芸能界を引退するとまでいったという。だが高岡は悩んだ末に離婚届に判をついた。
このスキャンダルはかなりのものだと思うが、テレビではほとんど取り上げられなかったようだ。当代の人気女優とジャニーズ事務所のアイドルとなればそれも致し方ないか。
NHKの『紅白歌合戦』を見ればわかるように、今のテレビはNHKでさえもジャニーズに乗っ取られた感がある。
その上、吉本興業の社長が「島田紳助の復帰を望む」発言をした。この非常識な発言に大マスコミが批判しなかったのはなぜだ。ジャニーズと吉本に牛耳られているテレビの惨状は、まだまだひどくなっていくようだ。
今週のグランプリは女性誌ながらスクープを発信し続ける「セブン」の記事。
『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)や『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で司会を務める宮根誠司(48)に隠し子がいたというのだ。発端は宮根が長年付き合ってきたA子さん(32)の知人から「宮根には奥さんでない人との間に3歳の子どもがいる」という情報からだった。
取材を申し込むと宮根は困った表情を浮かべながらも、一部始終をこう語った。
「A子さんと知り合ったのは6~7年前のことです。彼女は当時、夜のお店の接客スタッフとして大阪・北新地で働いていて、はじめはホステスと単なるお客という間柄でした。(中略)そのうち男女の関係になって、彼女の家にも行くようになりました」
宮根は93年に元モデルと結婚したが04年に離婚する。その後現在の妻であるB子さんと当時は恋人同士で、A子さんには「ぼくとは結婚できない」といってあったという。だが、結婚後A子さんから電話がかかってきた。
「07年の春ごろでした。ちょうど仕事が終わって夕方ぐらいに、ひさびさにA子さんから電話があって……。単刀直入に『子供ができた』といわれました。(中略)そのとき、ぼくが一瞬でも悩まなかったかといったら、嘘になると思います。正直、『困ったな……』とも思いました。だけど、尊い命が、すでに彼女のお腹の中にいると思ったら、ぼくがそれを奪ってええんかって考えて……」(宮根)
妻にそのことを伝えるまで1カ月ほど悩んだという。打ち明けると妻は沈黙を続け、1時間ぐらい経ってからこういった。
「(子供を中絶しなかったのは、)それはとりあえず正解や。あとはあなたのできる範囲で、自己責任でちゃんとやりなさい」
できた奥さんやわ! その前に宮根はA子さんの実家を訪れて両親に頭を下げている。
女の子が生まれたとき、彼は「ぼくにとってカノジョは宝だなって思いました」。2カ月後にその子を認知している。そして昨年5月に宮根と妻の間にも女の子が誕生した。
宮根はこう夢を語ってもいる。
「ぼくが70才ぐらいになったときに『お前ら、集合!』って、ふたりのむすめたちを呼んで、3人で飲みたいですね」
私は宮根の番組をほとんど見たことがない。だがこの記事を読んで見てみたくなった。宮根っていいやつじゃん。
テレビで有名になったためにスキャンダルで潰れていく人を何人も見てきた。だがこの記事にはホッとさせられる何かがある。
昔、結婚式でカミさんの叔父から、こういわれたことがある。
「スキャンダルを書いても、それが出たあと、その人間からありがとうといわれる記事を書く編集者になってくれ」。
自分にはできなかったが、こういう記事のことをいうのかも知れないと、読んでいて思った。
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
ナ・ホンジン監督デビュー作。なかなか芯のある力作ですよ。
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