米軍イラン攻撃、富士山噴火、紳助復帰……”賢者”が2012年を大胆予言!
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
第1位
「北朝鮮 次は『金正恩暗殺』『軍部クーデター』の異常事態」(「週刊現代」1月7・14日号)
第2位
「賢者51人 知りたい 知りたくない大予言」(「サンデー毎日1月1・8日号)
第3位
「化城の人 池田大作と創価学会の80年」(「週刊ポスト」1月1・6日号)
ブエナビスタが泣いた。
彼女にとってのラストラン・有馬記念が終わり、引退式の直前、暮れなずむ中山競馬場の空から雪が舞い降りてきた。
関係者たちに歩み寄ってきたブエナビスタの顔がアップになると、両目に涙が溢れ、右目からこぼれた一粒が光っていた。
その涙は、GI競走6勝の女傑が3歳の若駒・オルフェーブルに負けた悔しさか、まだ走れるレースへの未練だったのだろうか。
勝者オルフェーブルには何もやるな。敗れ去ったが、記憶に残る名馬ブエナビスタは、3.11の大震災で萎えそうになった日本人に勇気を与えてくれた名牝として長い間語り継がれるであろう。
その宵、中山競馬場全体がブエナのための「メリークリスマス」になった。さらばブエナビスタ、感動をありがとう。
ところで、ソニーが電子書籍専用端末「リーダー」を講談社の人間全員に配ったという。
電子書籍2年目でもなかなか進まない電子書籍市場にインパクトを与えようというものだろうが、この程度ではたいしたインパクトにはならないだろう。
講談社の中でも、配られて1度か2度見ただけで机の中に放り込む者、印鑑を持って取りに行かなければならないので面倒くさいという者それぞれだが、さほど関心は高くないようだ。
楡周平の『虚空の冠』(新潮社)は電子書籍のプラットホーム争いを描いた傑作小説だが、ソフトバンクの孫正義がモデルと思われるベンチャー企業の社長がアマゾンの「キンドル」のような端末を100万台無料で配ることを考え、実行する。
それに危機感を持った読売新聞の渡辺恒雄がモデルらしきメディアの帝王が、通信キャリアや大手出版社を巻き込んで、やはり無料で端末を大量に配り、電子書籍のプラットホーム戦争に勝利するというストーリーだが、これぐらいの台数を無料で配るぐらいの英断をしないと、この市場の先行きはまだまだ暗いだろう。
12月25日付の朝日新聞によれば、iPadなど新端末向けの売上額が2009年度の4倍の約24億円になったそうだ。携帯電話やパソコンを含めた電子書籍の販売額は約650億円だから、書籍売り上げ全体の1割弱だが、そのほとんどはマンガの売り上げである。
私が以前から言っているように、文庫本を超える優れた端末(ハード)が出てこない限り電子書籍の市場は大きく広がらない。
その点では「リーダー」も「キンドル」もまだまだ使い勝手が悪い。電子書籍に対する大手出版者側の腰の引け方を見ても、ビジネスモデルにはならないと踏んでいることが分かる。2012年も電子書籍に関しては暗中模索、試行錯誤が続くと思う。
さて、今週の3位には佐野眞一の新連載を挙げる。連載がこの賞の対象になることはほとんどないが、この「化城の人」には注目である。
なぜなら、池田大作創価学会名誉会長が公式の場から姿を消して、すでに1年半あまりが経つ。普通に考えれば病状が深刻化しているとしか考えられないが、創価学会側はだんまりを決め込んでいる。
池田名誉会長についてのノンフィクションを書こうとしているライターは、私が知っているだけで数人はいる。
創価学会という新興宗教についての面白さもさることながら、池田大作という人物への興味は尽きない。創価学会を日本最大の宗教団体にし、公明党という政党まで作り政界進出をし、あわよくば日本を創価学会一色にしてしまおうという野望は果たされることはなかったが、今こそ徹底的に検証してみるべきだろう。
矢野絢也という男がいる。公明党の委員長まで上りつめて学会の幹部でもある。
かつては池田の熱烈な信奉者であり忠臣であった。その彼が、今や反池田の急先鋒である。
そこへ至るには長い池田・学会との葛藤の歴史があるのだが、今回はそこまで書く紙幅がない。
確実に池田創価学会は瓦解し始め、後継者が誰になろうともこれまでのような一枚岩の体制を維持していくことができないのは、北朝鮮と似ているかもしれない。
佐野眞一がノンフィクション・ライターとして秀でているところは、獲物を捕らえるタイミングを外さない鋭い嗅覚にある。
池田大作創価学会名誉会長時代の終わりを告げようとしている今、彼が何をどう書こうとしているのか注目せざるを得ない。
化城(けじょう)とは法華経の教えの一つで、苦しい悪路を行く旅人が、最終目的地があまりに遠いのであきらめないよう途中に神通力による架空の城、蜃気楼の城を造り、そこで一旦休んだ上、旅を再び続けさせるという説話からとられたという。
1回目は、池田が生まれた大田区大森にある池田家代々の墓に目を向ける。その寺「密厳院」という寺は日蓮宗ではなく、真言宗の寺だというのだ。
「自分の家族や一族でさえ折伏できなかった男が創価学会の会長におさまる。そればかりか、以後半世紀以上その組織のトップに居座り続ける。それが、池田創価学会の最大の謎である」
この大河ノンフィクションがどういう展開を見せるのか、池田という人間がどう描かれるのか、佐野のライターとしての力量も試されることになるはずである。
第2位には年末恒例の予測特集の中で、比較的面白いものがそろっていた「サンデー毎日」の記事を挙げてみた。
1月から12月までに分けて、その分野の”賢者”が予言している。1月は「米国がイラン攻撃開始」するという物騒なことを、佐々木良昭東京財団上席研究員が言っている。
その根拠は11年12月4日にイランが米軍の最新鋭無人偵察機「RQ170」を押収したことだという。これは最先端の技術を満載しているため、米国としてはその情報がロシアや中国へ流失しないよう破壊するしかないのだという。
2月。北朝鮮は2月16日に金正日の誕生70年を盛大に祝うそうだが、「金正日誕生日『拉致被害者帰国なし』」と朴斗鎮コリア国際研究所所長が予言している。
金正恩になっても表面上は何も変わらないようだ。
気になる項目を拾っていく。3月には、富士山が300年ぶりに噴火すると警告する木村政昭琉球大名誉教授の「『3・11』から1年 富士山大爆発は4年以内」。
小沢一郎が政治資金規正法違反の罪に問われている裁判で無罪が出る。その結果、検察審査会が解体されると予測しているのはジャーナリスト魚住昭。
島田紳助が春の特番で芸能界へ復帰するという仰天予言するのは元吉本興業の木村政雄。
5月22日にオープンする東京スカイツリーは地元にとって恩恵がまったくなく、併設されるショッピング街に出店する墨田区内の業者はゼロだそうだ。東武鉄道は年間2,500万人の客を見込むが、下町情緒を壊すだけの乱暴な開発は、観光客から飽きられるだろうと予言するのは西恭三郎共産党墨田区議団長だが、私も同意見である。
6月には「解散・総選挙 野田辞任、『枝野首相』」と読むのは政治ジャーナリストの歳川隆雄。
在沖縄米海兵隊のグアム移転が白紙になり、普天間飛行場の移設が断念される可能性が現実味を帯びてきた。
6月の沖縄県議選では、「沖縄独立論」を唱える候補が出てくるかもしれない。そうなると、尖閣列島領有権を主張している中国がこれを好機とみて、まずは”尖兵”としてチャイナマネーを沖縄に投入してくるのではないかと予言するのは政治評論家の丸山勝彦。
8月には「ロンドン五輪で金メダルは19個」と楽観的な見方をしているのはスポーツジャーナリスト二宮清純。
9月の項では、メジャーリーグ入りをしたダルビッシュが15勝すると予言するのは野球評論家の与田剛。ただし、これまでのような中6日ではなく中4日のローテーションに戸惑うと5勝程度かと。
11月には米大統領選挙が行われるが、再選が危ういといわれるオバマが逃げ切ると読むのは渡部恒雄東京財団上席研究員。
共和党は前マサチューセッツ州知事ロムニーが有力だとする。失業率7%を超えると再選できないというジンクスがあるが、10%台から8.6%まで回復させてきた実績と巧みな話術で、オバマは再選を果たすというのだ。
12月には14年ぶりに日本人横綱・稀勢の里が誕生すると読むのは相撲ジャーナリストの中澤潔。
日経平均1万1,000円を回復するという、これまた楽観的な見方を示すのはマネックス証券チーフ・エコノミスト村上尚己。成長率が11年のマイナス0.9%からプラス1.3%と大きく改善し、内需系の増資が続き、消費税などの増税が決まれば自動車や住宅などの駆け込み需要が出てくるので株価も上がるというのだが、それって、増税された後は再び落ち込むってことだよね。元の木阿弥じゃん。
とまあ、当たるも当たらぬも八卦だが、今年以上の大災害が起こらないように祈るしかないようだ。
金正日の突然の死と若すぎる後継者・金正恩への不安感は近隣各国へ大きく広がっている。野田佳彦総理が珍しく韓国、中国と急いで話し合いをもったのも危機感の表れである。
金正日の死後、各誌この問題を扱っているが、「週刊現代」の特集に見るべきものがあったのでこれをグランプリに推す。
「現代」によれば中国は10月24日、次期中国首相に内定している李克強副首相が平壌へ行った際、ワインをがぶ飲みする金正日を見て、この独裁者の最後は予想されているより早いものになるだろうと中国首脳たちに報告していたという。
そのとき金正恩とも握手を交わしたそうだが、北朝鮮内部に異変が起きていることに気づいた。
首脳会談にも晩餐会の席にも金総書記の側近中の側近、金永春人民武力部長(国防相)の姿がなかったのだ。
金正日の命を受けて数々のテロを実行してきたのは金永春だといわれている。さらに金正日は将来の金正恩体制を全面的に支えてもらうために金永春を人民武力部長に昇格させ、後見人に指名した。
しかし、正恩と永春2人の考え方がまったく違うために、首脳部に大きな亀裂が生まれていると見る。
金永春は金正恩がやろうとした「10万戸の住宅建設」や「デノミ政策」「朝鮮国家開発銀行の発足」などを、経済改革が国外に門戸を開き、相対的に軍部の力が弱体化すると嫌って、ことごとく潰してきたという。
2人の確執はさらにエスカレートしていったために、ついに金総書記は金永春を疎んじるようになったのだが、その裏で驚く決断を中国側はしていた。それは金正恩を後継者として無能だと断じ、金永春に対して、金総書記亡き後は中国人民解放軍が全面的に支援すると伝えていたというのだ。
さらに金正恩が中国への亡命の道を選んでも、受け入れるつもりはない。軍の傀儡か亡命か。どちらにしても金正恩に明日はないというのが「現代」の読みである。
情報源が明示されていないので、このまま信じるわけにはいかないが、後ろ盾を突然失った若いボンボンがこの国を率いていくためには軍の協力が不可欠である。しかし、軍がさらにその力を強めていくことになれば、人民の窮状はさらに深まること、これも間違いない。
そうなれば北からの難民があふれ出し、金王朝はあっという間に崩壊するのだろうか。
26年前、私がたった一人で北朝鮮・平壌に3週間招待され見聞した体験をもとに言わせてもらえば「ノー」である。
国民は金日成が作り上げた「主体思想」を学び、学校教育だけではなく、日常的にテレビや映画、オペラ(北朝鮮はオペラ大国である)で、日本やアメリカ帝国主義の悪辣ぶりを見せられ、日韓併合時代の悪夢を常に思い出させられている。
白頭山から白馬にまたがり日本帝国主義を打ち破った金日成は彼らの神であり、その一族への尊敬の念はそう簡単に消し去ることはできない。
今すぐ日本がやるべきことは、難民やテポドン、ノドンが飛んでくることを恐れるのではなく、金正恩と話し合うパイプを作り、時間をかけて北を解放していく「太陽政策」を取ることにある。先ごろ韓国側が従軍慰安婦問題を出してきたように、朝鮮の人たちの日本への反感は根強いものがある。また、韓国と北は同じ民族であるということを忘れてはいけない。
平壌滞在中に多くの北の人間に話しを聞いたとき、一様に彼らの悲願は「民族統一」である。かつて韓国の要人が私にいった言葉を思い出す。
「韓国人は北に感謝すべきだろう。なぜなら南朝鮮の人間は本来が怠け者なんだ。北の脅威があったから、北に負けまいとして頑張って働くことができ、経済的な繁栄を築くことができたのだから」
南北が統一されてしまえば、中国、朝鮮、台湾に囲まれた日本は孤立するしかない。
2012年こそアメリカの呪縛から逃れ、中国、韓国と話し合い、朝鮮半島を安定させるために日本が主導的な役割を果たすべき年である。いまの野田政権にそんなことを期待してもと、はなからあきらめないで、だめならできる政権を選び直して、させるしかないと、私は思う。
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
福来たれ。
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