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名プロデューサーは焼き肉奉行であれ。『アニメプロデューサーの仕事論』

animepro1124.jpg『アニメプロデューサーの仕事論』
(キネマ旬報社)

 ブラピ、ディカプリオ、トム・クルーズなど、ハリウッドの大物俳優が映画のプロデュース(製作)を手掛けるケースが増えている。「ただの客寄せパンダじゃないの?」と訝しんでしまうが、彼らはちゃんと”プロデューサー”をしているのだろうか。プロデューサーというと、セーターを肩から巻きつけ、現場でエラそうにしているというのが古典的なイメージだが、プロデューサーとは一体どのような仕事なのか。

 肩書きはよく耳にするが、一般的にはあまり知られていないプロデューサーのお仕事。監督ほど名前も表に出てこず、クレジットさえされていないこともある。そんな彼らの素顔に迫ったのが『アニメプロデューサーの仕事論』(キネマ旬報社)。石川光久氏、南雅彦氏、安田猛氏、内田健二氏、大月俊倫氏の5人のアニメプロデューサーに取材した本だ。各氏はそれぞれ『攻殻機動隊』『交響詩篇エウレカセブン』『涼宮ハルヒの憂鬱』『機動戦士Zガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』など歴史に残る名作アニメを手がけた敏腕プロデューサー。インタビュー形式で、名作誕生の裏側や、現在のアニメ界の実情、彼らの仕事論を伺い知ることができる。


 プロデューサーの主な仕事は、作品の企画を提案し、出資者から制作資金を集め、キャスティングやスタッフの手配、広告の打ち出し、メディアミックスの展開、DVDの販路の開拓など、立場や権限により内容も変わってくるが、作品に関わるすべてを統括し、管理することだ。肩書きも関わり方も異なる5人だが、考え方には一筋通った共通項がある。それは「プロデューサーは黒子である」「興行として成功させる」という強い意識だ。

 特に、角川書店の安田氏の話が興味深い。安田氏は角川書店の編集者から映像事業局局長へ異動し、アニメのプロデューサーになったという変わり種。『スレイヤーズ』『涼宮ハルヒシリーズ』『時をかける少女」』など、クレジットされた作品の多さに、一時は架空の人物説まで流れたほど。ラノベやコミックス、実写とのメディアミックスを盛んに打ち出し、「グループの事業の一環」「ビジネスチャンス」としてアニメ制作をとらえる眼差しは冷徹なビジネスマンそのものだ。人や資材のコーディネイト、作家の懐柔、クリエイターのアイデアを引き出す作業など、編集者とプロデューサーの仕事は非常に似ている、と安田氏は言う。話題は、過去のOVAの話から製作委員会方式、国外展開、違法ダウンロード、巨額予算のアニメ、シネコンと劇場公開の可能性など四方八方に広がり、アニメファンならずとも一聴の価値ある内容となっている。

 話を聞いていると、クリエイターとプロデューサーは車の両輪、水と魚のような、お互いなくてはならないような存在であることがよく分かる。面倒を厭わず、弱い者を思いやり、すぐ次の仕事に目を向ける――、名プロデューサーの「仕事論」は、我々の仕事の現場にも応用できる本質的なことばかりだ。彼らの仕事ぶりは、どんな職業の人にも十分な刺激を与えてくれることだろう。
(文=平野遼)

アニメプロデューサーの仕事論

なるほどなるほど。

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最終更新:2013/09/10 14:33
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