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『シティライツ』大橋裕之インタビュー

『ゲゲゲの女房』で一念発起!?  サブカルチャー界のシンデレラ・ボーイの素顔

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 「謎漫画作品集」で漫画家デビュー。その後、ひとりでさまざまなペンネームを使い分け、複数の作品を同時に連載する「週刊オオハシ」を刊行。その独特な自費出版活動がサブカルチャー界隈でじわじわと話題を呼び、今や「モーニング・ツー」(講談社)で表紙を飾るまでの人気連載漫画家となった大橋裕之。哀愁と笑いが入り交じったショートストーリー『シティライツ』第1巻の発売を祝し、来る11月14日新宿LOFTにて開催されるイベントには、大橋のためならえんやこらと元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎、いましろたかし、しまおまほをはじめとする錚々たる面々が顔をそろえるという。そんな、サブカルチャー界のシンデレラ・ボーイともいえる大橋裕之の気になる素顔に迫った。

――しかし、まつげが長いですね。

大橋裕之(以下、大橋) よく言われます。本当に無駄なんですけどね。

――作品の印象から、大橋さんって周りをよく見ている方なんだろうなと思っていたんですが、子どものころから客観的だったんですか?

大橋 あんまり主張せず、端から見てることが多かったですね。まぁ、仲の良い友達はいたんですけど、クラスとか大勢になっちゃうとしゃべれなくて……。

cl01.jpg(c)大橋裕之/講談社

――あまり他人としゃべりたくなかったんですかね。

大橋 いやいや、全然しゃべりたかった……。でも、恥ずかしかったりしてできなかったですね(笑)。自意識がもうすごく過剰だったので、なんか笑われるんじゃないかとかいつも気にしてて。ブランコなんかも漕げるんだけど、漕ぐことが恥ずかしかったり。保育園に入って、同級生の女の子と会ってもしゃべれなくて、その後もずーっとしゃべれなかったですね(笑)。気持ちはものすごくしゃべりたいんです、けどしゃべれないから悩んで毎日辛かったんです。そこから解放されたかったんで、高校はほぼ男子校みたいなところを自ら選びました。

――それは相当消極的ですね。でも大橋さん、まだ商業誌での連載が何も決定していなのに上京されていますよね。ポジティブなのかネガティブなのかどっちなんですかね。

大橋 自分でも正直分からないんですけど、周りからは、「あんまりしゃべらなかったり、消極的なことを言ったりしてるのに、意外とやってる」と言われて、ああそうなのかと後から気づくというか。あまりポジティブではないと思います。何も決まってないのに上京しちゃったのは、3年間就職していたところを辞めたかったのもあるし、漫画を自費出版でしか出せてなかったので、ネタがどんどん無駄にたまってきていて、それをどういうかたちでも早く出したかったんで。そんな大したネタを考えていたわけでもないんですけど……。

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――NHKの朝ドラ『ゲゲゲの女房』を見たことが『シティライツ』連載のきっかけとなったというのは本当なんですか?

大橋 そうですね。水木(しげる)先生の当時の家と、今住んでる僕の家のボロい感じも近かったりして、おこがましいですけど、自分に重ね合わせてしまって、見終わったときに、これはもうやんなきゃなってなりましたね。連載が始まる1~2年前、ちゃんとしたネームじゃなくて、アイデアみたいなものを1度「モーニング・ツー」編集部に持って行ったことがあって、そのときに「キャラとか続きものとかを考えてみたら?」と言われたんですが、まったく考えられなかったんです。それで、商業誌は完全にあきらめてたんですけど、『ゲゲゲの女房』を見てから、自信はないけどとりあえず持ってかなきゃ始まらないなと思って。

―― それが『シティライツ』の元ネタだったというわけですね。

大橋 最初は4ページくらいの短編だったら、スキがあればもしかしたら載せてくれるのかなとか思ったんで、短編を持っていきました。それで、連載が決まる前くらいに、何かしらの括りがあった方がいいんじゃないかということで、ひとつの街で起きている話にしようと決めたんですけど、徐々にあまり関係なくなってしまっていますね(笑)。一応、同じような町名は出してるんですけど。

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――毎日の中で起きる、テンションが上がる瞬間とか、すごく落ち込む瞬間とか、すごく共感するんだけれど、読み終わるとそれはすべて幻想です、と言われているような、笑えるんだけどちょっと寂しくなるエピソードが多いですよね。

大橋 もし、実際自分が体験したら悲しいだろうし嫌ですけど、ちょっと悲しい感じが好きというか、アホっぽいのに悲しいみたいな場面が好きですね。なんとも言いようがないような、笑えもしないし悲しいわけでもなく、よく分からないけど心に残るような、そういうのが好きなんですよね。

――確かに、そういうシーンばかりですもんね。ベースにある気持ちは同じだと思うんですが、自費出版と商業誌でテンションや意識の違いはありますか?

大橋 まぁ、自費出版は自分勝手にやれるので、主人公が何もせずに終わったりもするんですけど、『シティライツ』の場合は、あまりに何もなさすぎると担当さんが許してくれないんで(笑)。多少、物語の抑揚みたいなものには気をつけてますね。本当に微妙なところをもうちょっとだけ伝わりやすいようにしよう、と意識しています。

――漫画連載以外にも、バンドや紙芝居など多岐にわたる活動をされていますが、そのモチベーションはいったいどこからくるものなんですかね?

大橋 最初は絶対漫画じゃないと、とは思ってなかったんです。楽器が弾けるなら音楽でもいいし、人前に立って何かやるんだったら芸人でもよかったんですけど、こんなヘナヘナな絵ですけど、これでもやっていけるなら自己完結でできるものなので、漫画を選んだんです。漫画に使えるネタを考えることが好きなので、それを発表したいというのと、見た人に面白いって思ってもらいたいっていうのが大きな動機ですね。それは、最初も今も変わらないです。「週刊オオハシ」の方は、いま止まってしまってる状態なんですけど、続いている話があって、筋書きはもう決まっているので描きたくてしょうがないんです。けど、どうしてかその作業をやる気になれなくて……。時間がないわけじゃないんですけどね。『シティライツ』も、このまま同じ感じではまずいかなと思ってはいるので、なんか考えなきゃなと。

218.jpg「週刊オオハシ」。

――担当編集さんにおうかがいしたいのですが、『シティライツ』の連載を決断された大橋さんの魅力ってなんだったのでしょう?

担当編集・柳川さん 決断したのは私じゃなく編集長なんですけど……(笑)。初めは、絵柄的に難しいのかなって思ってたんですけど、話がすごく面白くて完成度も高かったんです。「モーニング・ツー」は比較的自由な雑誌なので、「この人だったら大化けする可能性があるんじゃないか」という編集長の一言で連載が始まりました。ただ連載の条件として、自費出版で描かれているときの大橋さんの世界観とは少し変わってしまうかもしれないとは思ったんですが、手書き文字を写植に変えることと、枠線を定規で引くことの2点を提案させていだいて。

――大橋さんはその提案、すぐ快諾されたんですか?

大橋 はい。枠線をちゃんと引くの大変だなぁとは思いましたけど。定規使うの苦手なんで……。ホント、とんでもないところから話をしていましたよね。

――独特な絵柄の世界観なので、UFOとか宗教とかも出てきても、ああこういうことあるよねと妙に納得させられてしまうというか、キャラクターにすごくリアリティーがありますよね。

大橋 自分的にはUFOとか出てきてめちゃめちゃなんだけど、普通の人たちを描いてます。この絵柄でめんどうくさいとこは省いているだけなんですけど。

――各界のクリエイターの方々から賞賛の声も上がっていて、おモテになっているのに本当にガツガツしてないというか謙虚ですね。

大橋 いや、モテてはないですよ。うれしいんですけど、そこまでたいしたことやってる気もないし、新しいこともあんまりやってないんで。本当に周りに紹介してくれたりする人が多かっただけで。だから、完全なラッキー・ボーイなんです。

――大橋さん、浮かれたりはしゃいだりすることもあるんですか?

大橋 自信があるときとないときの波がものすごいんで、たとえば褒めてもらっても調子に乗れないんですよね。心の中ではちゃんとスキップしてますし、仲良い友達といるときは大声出して騒いたりしますけど、自分に酔うみたいなことは全くないですね。
(取材・文=小川知子)

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●おおはし・ひろゆき
1980年生まれ。愛知県出身。2005年、初ミニコミ「謎漫画作品集」、06年ひとり連載漫画雑誌「週刊オオハシ」を自費出版で開始。07年、「QuickJapan」(太田出版)にて商業誌デビュー。73から75号まで『世界最古の電子楽器 静子』を連載。10年、「モーニング・ツー」(講談社)にて『シティライツ』連載開始。著書に『音楽と漫画』(太田出版)、『シティライツ』(講談社)がある。

●『シティライツ』第1巻発売記念イベント
【サイン会&インストアライブ @ タワーレコード新宿店】
日時: 11月13日(日)19:00~
場所:タワーレコード新宿店  東京都新宿区新宿3-37-1 フラッグス7階
  TEL 03-5360-7811(お問い合わせは、10階書籍コーナー担当まで)
出演バンド: マリリンモンローズ/paradise
参加方法:タワーレコード新宿店10階にて『シティライツ』第1巻を購入・もしくは予約していただき、サイン会参加券をもらってください。サイン会参加券配布は、タワーレコード新宿店書籍コーナーのみの取り扱いとなります。他の店舗での取り扱いはありませんのでご注意ください。

【ライブ&トークイベント @ 新宿LOFT】
日時: 11月14日(月)18:00~
場所: 新宿LOFT  東京都新宿区歌舞伎町1-12-9 タテハナビルB2
TEL:03-5272-0382
出演者:【大喜利&トーク】いましろたかし、大橋裕之、坂本慎太郎、しまおまほ、中原昌也、山下敦弘、吉田豪、古泉智浩ほか
  【ライブ】GELLERS、Paradise、平賀さち枝、マリリンモンローズ
チケット価格: ADV 2,300円/DOOR 2,500円(ともに+1ドリンク)

シティライツ(1)

クセになる漫画。

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最終更新:2013/09/10 16:15
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