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『エイリアン・ビキニの侵略』公開記念インタビュー

韓国インディーズ映画の奇才監督が、エロくて笑えるSF作品で日本上陸!

IMG_6587_.jpg“韓国インディーズ映画の雄”と称される
オ・ヨンドウ監督。長編デビュー作
『エイリアン・ビキニの侵略』は「ゆうばり
国際ファンタスティック映画祭」でナ・ホンジン監督
たちから推され、グランプリを受賞した。

 ここ数年、次々と衝撃作を放っている韓国映画界。『チェイサー』(08)のナ・ホンジン監督、『息もできない』(08)のヤン・イクチュン監督、『ビー・デビル』(10)のチャン・チョルス監督……と新人監督たちのデビュー作が世界で絶賛されている。彼らは74~75年生まれで30代半ばでの監督デビューと決して早咲きではないが、その分、クリエイターとして溜め込んできた感情がスクリーンで炸裂している感がある。ポン・ジュノ監督らに続かんとする熱気をはらむ韓国若手監督の中に、タイプの異なるホープがさらに加わった。長編デビュー作『エイリアン・ビキニの侵略』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2011」でオフシアター・コンペティション部門グランプリを受賞したオ・ヨンドウ監督だ。同部門は過去に『マイ・バック・ページ』(11)の山下敦弘監督、『さんかく』(10)の吉田恵輔監督、『SRサイタマノラッパー3』を製作中の入江悠監督らを輩出しており、若手監督の将来性に目利きがあることで定評がある。外国人初のグランプリに輝いたオ・ヨンドウ監督が約7か月ぶりに来日。製作費35万円で作った『エイリアン・ビキニ』の裏話、さらには韓国の映画製作事情について語った。

――『エイリアン・ビキニ』にはSF、コメディ、お色気、アクション……と男子が大好きな要素がすべて詰め込まれていますね。映画マニアに国境はないんだなぁと感じました。

alien_bikini01.jpgひとり自警団のヨンゴン(ホン・ヨングン)
は街で暴漢に襲われていた美女(ハ・ウン
ジョン)を助け、自宅で介抱する。次第に
甘いムードになってくるが……。
(c)kinomangosteen

オ・ヨンドウ おぉ、ありがとうございます。大変な褒め言葉ですね(笑)。とにかく”自分の映画を撮りたい”という一心で作った作品なんです。主演のホン・ヨングンさんとボクとで、まずプロットを考えました。ヨングンさんの容姿から、マジメな男がすごい美女にSMプレイを仕掛けられるという設定になったんです。そこから、美女は地球侵略にやってきたエイリアンで、男は結婚まで純潔を守ろうとしている童貞……といったキャラクターに肉付けされていきました。きちんとした脚本は作らずに、キャストやスタッフと話し合いながら、面白いアイデアが出たら、その場で撮っていくというスタイルで進めていったんです。その結果、いろんな要素を持つ作品に仕上がったんです(笑)。

――よくぞ製作費35万円で、これだけの娯楽作品を完成させましたね。

ヨンドウ よ~く見ると、お金が掛かってないことがわかると思います(笑)。1カ月半ほどの製作期間で、撮影には20日間使いました。撮影場所はほとんどボクの自宅です。自宅で撮って、ご飯も自宅で作って、みんなで食べていました。超節約型の映画なんです(笑)。

――日本の低予算映画は1~2週間で撮り上げることが多いので、撮影に20日間費やしたのは大したものだと思いますよ。

ヨンドウ 今年の「ゆうばりファンタ」で一緒になった山口雄大監督の『極道兵器』(11)は12日間で撮ったそうですね。それを聞いて、すごいと思いました。韓国では撮影にかなりの日数を費やすのが一般的です。商業映画だと2~3カ月掛けて撮ることが多いんです。ですから、ボクらのように短期間で撮ることは珍しいはずです。20日間と限られた日数でしたが、ボクらは楽しんで撮影していたので、とても充実した時間を過ごせたんです。

■”下着”か”ビキニ”か、それが問題だ

――タイトルロールとなっている”エイリアン・ビキニ”役のハ・ウンジョンさんがとても魅力的。健康的なセクシーさで、日本人好みのタイプだと思いますよ。監督とウンジョンさんはどのように出会ったんですか?

alien_bikini02.jpgセクシー美女は、実は地球侵略を企む
エイリアンだった! 地球人男性の精子を
入手するため、あの手この手で主人公を
悩殺するのだった。

ヨンドウ ボクのデビュー作である短編映画『クリスマスを切る』(07)を撮る際に、キャスティングディレクターをしている友人から紹介されたんです。そのときは短編映画だったこともあり、ちょっとした役しか用意できませんでした。でも、その次にオムニバス映画『隣のゾンビ』(09)でゾンビウィルスに感染した恋人を愛し続ける女性というロマンティックな役があったので、彼女に頼んだところ、とても評判が良かったんです。それで今回もヒロイン役をお願いしました。ちなみに、彼女は英国のミドルセックス大学パフォーミング・アーツ科を卒業した上に、韓国の中央大学芸術大学院を最近卒業したばかりなんですよ。

――うわ、すげーインテリなエイリアンなんですね!

ヨンドウ そうです(笑)。今回のエイリアンは地球の生命体のことを知らずに飛来して、人類の習性をすべて学習して身につけたわけですから、知能指数の非常に高いエイリアンなんです。彼女にぴったりな役だったと思います(笑)。

――あの、すっごくどうでもいい質問なんですが、タイトルには”エイリアン・ビキニ”とありますが、本編を観るとハ・ウンジョンさんは下着姿で主人公を誘惑しますよね。正しくは”下着エイリアン”なんじゃないでしょうか?

ヨンドウ いやいや、どこの国でもタイトルの語感は大切です。”エイリアン・アンダーウェア”よりも、やはり”エイリアン・ビキニ”のほうがイケてるでしょう(笑)。タイトルを聞いただけで、何だか楽しそうじゃないですか。ボクらは自分たちが面白いと感じたことを、速攻で実行に移す。それがモットーなんです。

――すみません、くだらない質問をしたことを今、反省しています。主人公役のホン・ヨングンさんは長年にわたって街の治安と自分の童貞を守り続けているかなりイタい自警団役。韓流イケメンブームとは一線を画する、実に味わい深いルックスの持ち主ですね。

ヨンドウ ハハハ、お茶みたいな味わいでしょ? お茶といっても、甘茶じゃなくて、渋茶です(笑)。ヨングンさんは本作や『隣のゾンビ』でアクション指導も担当している多彩な才能の持ち主です。彼が映画の世界に入ったのは、アクションスターになるという夢を叶えるためだそうです。大変なロマンの持ち主なんですよ(笑)。彼の情熱があってこそ、面白い作品に仕上がったと思います。彼は残念ながら、ウォンビンさんのようなルックスは持ち合わせていません。でも、それでいいとボクは思います。ヨングンさんみたいなイケてないルックスの持ち主でも、映画の中ではかっこいいヒーローになれることを『ビキニ・エイリアン』は証明したんじゃないでしょうか。新しい時代に、新しいヒーロー像があってもいいと思いませんか。

alien_bikini03.jpg主演のホン・ヨングン。オ・ヨンドウ監督と
共に映像製作集団キノマンゴスチンを立ち
上げ、俳優・演出・武術指導とマルチな
才能を発揮している。

――二枚目のウォンビンより、味わい深いヨングンさんにシンパシーを抱く日本の男性は多いと思いますよ。

ヨンドウ やったね!(ガッツポーズするヨンドウ監督)

■監督デビューするよりも、2作目を撮るのが難しい

――ここから、ちょっとマジメな質問してもいいですか? ヨンドウ監督は35歳で長編デビューしたわけですが、何か背中を押された契機があったんでしょうか?

ヨンドウ ボクはこれまで、ずっと映画のスタッフとして働いていました。商業映画での助監督経験が長く、美術スタッフを務めたこともあります。このまま、スタッフの仕事を続けてもいいかなぁと考えた時期もあるんですが、「自分の映画を撮りたい」という映画界に入ったときの最初の気持ちを思い出したんです。もちろん韓国の男性なので、途中で2年間兵役も勤めました。35歳でのデビューとなりましたが、それは自分の考えた作品を監督するために必要な時間だったと考えています。もうそろそろ自分の撮りたい映画が撮れるんじゃないか。そう思えたのが、この年齢だったんです。

――韓国というと『母なる証明』(09)のポン・ジュノ監督、『親切なクムジャさん』(05)のパク・チャヌク監督、『悪魔を見た』(10)のキム・ジウン監督ら”386世代”と呼ばれる40歳代の監督たちが世界的に活躍していますが、ナ・ホンジン監督やヤン・イクチュン監督ら新人監督たちが次々とデビューしていることで、新しい流れが生まれつつあるんでしょうか?

IMG_6601_.jpg「童貞映画になることは想定
していませんでした。主演のヨン
グンさんをイメージした結果、
童貞男が主人公になったんです
(笑)」とヨンドウ監督。

ヨンドウ ナ・ホンジン監督とはボクは1歳しか違わないので、確かに同世代ですね。う~ん、新しい流れというよりは、ようやくポン・ジュノ監督らに続く新しい芽が出てきたという自然な流れでしょう。世代交替ではなく、韓国映画の層が厚くなりつつあるんじゃないかと思います。以前の韓国映画界では映画監督は40歳を過ぎると映画が撮れなくなるか、もしくは撮らなくなってしまう……という残念な状況が続いてきました。映画製作は大変なお金がかかるため、韓国では仮に1作撮ることができても、なかなか2作目を撮れず、あっという間に40歳代になって、仕事がないまま消えてしまう……というケースが多いように思います。韓国で監督デビューすることはかなり難しいことですが、2作目を続けて撮ることはそれ以上に困難なことなんです。その点、ポン・ジュノ監督ら先輩たちが活躍していることで、新しい道ができつつある。その道をボクたちは歩いているわけなので、先輩たちには大変感謝しています。

――ヨンドウ監督と同じく「ゆうばりファンタ」出身の入江悠監督は苦心しながら『SR』シリーズを撮り続けていますが、韓国のインディーズ映画シーンも大変ですか?

ヨンドウ 楽なインディーズ映画があれば、それはインディーズ映画ではないですね(キッパリ)。映画というものは収益を上げなくてはいけないわけですが、インディーズ映画で収益を上げるのは非常に難しいことです。韓国でインディーズ映画を撮り続けていくことは、ほぼ不可能なことです。ボクの場合は『エイリアン・ビキニ』が「ゆうばりファンタ」でグランプリをいただいたことで、製作支援金を元に第2作目を撮ることができました。大変ラッキーだと感謝しています。

――日本では監督になると食べていけなくなるので、助監督のままでいる人もいます。

ヨンドウ 韓国と日本とでは、映画界の考え方が異なるのかもしれません。韓国では助監督はあくまでも監督になるためのステップであり、助監督という職業はないんです。ボク自身も長い間、映画スタッフの仕事を続けましたが、映像関係以外の仕事はしたことがありません。だから、今後は映画監督として稼いでいくしか道はないと覚悟しています。

――う~ん、韓国の新人監督の作品に手加減なしの力作が多いのが、わかる気がしてきました。新人監督にとって鬼門である第2作をすでに撮り終えたとのことですが、どんな作品になるんでしょうか?

ヨンドウ 『ビキニ・エイリアン』はメーンキャストは2人でしたが、次回作は4人になります。探偵が未来から来た女性と一緒にタイムマシンを探すという、SF要素とサスペンス、アクションを融合させたものになります。探偵を主人公にしたのは、「ゆうばりファンタ」の審査委員長が林海象監督だったことから思い付きました。ホン・ヨングンさんとハ・ウンジョンさんもメーンキャストとして登場します。中でもウンジョンさんは今回の清純派セクシー路線とは変わって、ヤクザの妻役で生活感の滲み出た大人のセクシーさを披露しています(笑)。まだ撮影が終わったばかりで、どう編集するかで作品の雰囲気は変わってくるかと思いますが、新作も期待していただけると思います。日本のみなさんにも応援していただけるとうれしいです。『エイリアン・ビキニ』ともども、よろしくお願いします!
(取材・文=長野辰次)

alien_bikini_main.jpg
●『エイリアン・ビキニの侵略』
監督・脚本/オ・ヨンドウ 出演/ホン・ヨングン、ハ・ウンジョン、チェ・ヨンジョ、チョ・フンヨン、ソ・ビョンチョル、キム・ヒョンテ、キム・ソンミン 配給/キングレコード 10月22日(土)よりシアターN渋谷ほか全国順次公開 <http://www.alien-bikini.com>

●オ・ヨンドウ
1975年1月生まれ。95年から映画業界で働き始め、2007年に短編映画『クリスマスを切る』(未)で監督デビュー。俳優のホン・ヨングンらと映像製作集団キノマンゴスチンを立ち上げ、オムニバス映画『隣のゾンビ』(09)を発表。プチョン国際ファンタスティック映画祭で観客賞、審査員特別賞を受賞し、韓国インディーズ映画界で注目の存在となる。長編デビュー作『エイリアン・ビキニの侵略』は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2011」のオフシアター部門で、ナ・ホンジン監督ら審査員から高い評価を得て、外国人としては初となるグランプリを受賞。同映画祭から製作支援金200万円を受け、長編第2作を現在製作中。

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最終更新:2013/09/10 19:30
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