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映画『スパルタの海』公開記念インタビュー

戸塚宏校長が唱える”体罰の必要性”28年の封印を解いた『スパルタの海』

IMG_5258_.jpg「体罰を復活させれば、日本の教育、そして日本社会は甦る」と説く
戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長。
「戸塚ヨットスクールを支援する会」東京事務所にて。

 ”封印映画”として有名な作品に『スパルタの海』(83)がある。1980年代にマスコミに大バッシングされた戸塚ヨットスクールを題材にした実録ドラマだ。戸塚宏校長役を伊東四朗が熱演し、非行、不登校、家庭内暴力……といった問題を抱える情緒障害児たちへの戸塚流体罰指導に生々しく迫っている。メガホンをとったのは『伊豆の踊子』(63)、『潮騒』(75)のヒットメーカー・西河克己監督。寮内でスクール生が死亡する事件などを盛り込みながら、スクール生同士の間で恋愛感情が芽生える様子も描かれ、社会派青春映画としての完成度は非常に高い。

 配給会社の東宝東和は1983年9月の全国公開を目指していたが、同年6月に戸塚校長、コーチらが監禁・傷害致死の容疑で逮捕される。映画の企画段階からすでに始まっていたスクールへのバッシングは最高潮に達し、東宝東和は公開を断念。以後、長きにわたって『スパルタの海』は伝説の”お蔵入り映画”となっていた。その後、2005年に著作権が東宝東和を離れ一部企画上映などが実現されたが、全国ロードショーが実現するのは今回が初めてであり、実に28年の時を経て”完全解禁”となる。

 傷害致死で実刑判決を下された戸塚校長は06年に出所。ヨットスクールの校長に復帰し、今も引きこもりやニートたちの更生に取り組んでいる。『スパルタの海』公開にあたり、戸塚校長その人にご登場願った。戸塚校長は終始微笑みながら、体罰の必要性、映画を公開中止に追い込んだマスコミの罪状について語った。

――映画の中で、スクール生が訓練中にちょっとでも気を抜くと、殴られ、角材で叩かれ、堤防から海へ突き落とされる様子が描かれていますが、これは戸塚ヨットスクールの当時の訓練をリアルに描いたものと思っていいんでしょうか?

戸塚校長(以下、戸塚) そうだねぇ、まぁ、映画ではウルフと呼ばれる主人公がスクールに入ってからもずっと反抗し続けるでしょ。でも、実際はあんなことはなかったわな。暴れるのは最初の1日だけ。言うこと聞かんとボコボコにして、あとはもう猫みたいになっちゃうんですわ。

――まず、ボコボコですか。

戸塚 えぇ、それがやり方でした。今までそういう目に遭わなかったのがヤツらの不幸なんよ。一度も痛い目に遭ったことがないから、人の言うことを聞かんわけですよ。本当は幼児の頃に味わっておくべきこと。幼児の頃なら、お尻をペシャッと叩く程度でよかった。でも、大きくなったらお尻ペシャくらいじゃ効かん。これ以上やられたら死ぬ、と思わせるくらいボコボコにするんです。今まで10年、15年とず~っとサボり続けてきた連中ですよ。「言うことを聞け」といっても無理なんです。

――きれいごとでは済まない教育現場の壮絶さは、映画からも伝わりました。

戸塚 でも、そんなふうにやると、「子供たちの自主性や権利を尊重しろ」という人間がすぐ現われる。子供たちの自主性とか権利とか言い出したから、あんな子たちが増えたんやないの? 権利や自由が何かわかってない子供たちに「自由にやりなさい」と教えても、自由気ままに好き放題にやるだけ。問題に立ち向かって乗り越えることができなくなってしまう。逃げ出してしまうようになる。マスコミが「逃げろ、逃げろ」とか無責任に後押しするから調子づく。いちばん無責任なのはマスコミやない?

totsuka_spartanoumi.jpg西河克己監督、伊東四朗主演に
よる映画『スパルタの海』。西河
監督は自身の息子の不登校に悩み、
またその息子を交通事故で亡くし
た直後に製作に臨んだ。

――はい、マスコミの言っていることを鵜呑みにすると、間違いなく大変な目に遭います(苦笑)。

戸塚 まぁ、マスコミもそうだけど、学者も知恵遅れなんじゃないかと思うくらい、物がわかっとらん。特に彼らのいう精神論は間違いだらけ。日本人は欧米人のいう精神論を戦後押し付けられたわけやね。本当は日本が独立したときに正さなくてはいかんかった。欧米人の言ってることが正しいかどうか検証もせんと、欧米人が言うことやから正しいとしてしまった。「叱るよりも褒めろ」という教育方法も米国人のマネやからね。

――叱るより褒めるほうが楽ですしね。

戸塚 そうやろ。これだけ今の日本の教育は荒廃しとるのに、それでも学者たちはまだわかっとらん。マスコミも学者も、自分で考えることのできん、ただの偏差値秀才ばっかりよ。そいつらが日本をリードしとる。特にマスコミの愚劣さは信じられんほど。自分たちのことをエラいと思っとる。バカは自分のことをバカとわかっとらんヤツのことを言うんよね。バカと言われて、すぐ怒るのが本当のバカ。マスコミは”権利”の意味もわかっとらん。権利の意味、わかる?

――戸塚校長は著書『教育再生!』(ミリオン出版)の中で、『rightは「権利」と和訳されているが、これは誤訳』と指摘されていますね。「right」は与えられる「権利」ではなく、手に入れる「資格」と訳するのが妥当だと。

戸塚 うん、それなのに、日本人は「right=権利」だとずっと思ってきた。マスコミは「権利とは何か」もわからないまま、「権利を守れ」と言い続けてきた。偏差値秀才やから、習ったことは全部正しいと思っとる。なぜなら、欧米人が言ったことだからと。やっぱり、マスコミがいちばん悪いんやないの?

――『二百三高地』(80)、『大日本帝国』(82)などの実録戦争映画で知られる天尾完治プロデューサーから『スパルタの海』の映画化の申し込みがあった際はどうだったんでしょうか? 映画もマスメディアになりますが……。

戸塚 結構なことよ。良きにつけ悪しきにつけ、どんどんマスコミに報道させたほうがいい。そうすれば、どんなに頭の悪いマスコミの人間も少しは考えるようになるやろ。もう30年近くも前のことになるけど、あのときに日本全体で教育論争になっておけば、変なヤツはその後は生まれんかったはずよ。

――それが、論争にはならず、一方的なバッシングになってしまった。戸塚式教育論が間違いなら、どういう教育システムを新たに作らなくてはいけないかという方向には行かなかった。

戸塚 バッシングの理由が、自分たちと考え方が違う、自分たちが教わったことと違うことは認めないということやったからね。私らをバッシングするだけで、どうしてあんな子たち(情緒障害児)ができたのかには話が進まんかった。マスコミはスクールから逃げ出した子から聞いた話ばかりを取り上げて、私らを悪者にしたんや。自分では何もできず、できないことは社会や他人のせいにするのがあの子たちの特徴やからね。子供たちにも理性があるから殴る必要はないやろうと、マスコミは言うわけや。子供たちには生まれながらに理性が備わっているという考えは、欧米人の考え方。それはなぜかというと、「人間は神が創ったもの」という前提があるから。でも、欧米人は本気で「人間は神が創った」なんて信じてませんよ。それを日本人はマジメに信じやがったわけや。

■誤った教師像を広めた人気ドラマの弊害

――映画『スパルタの海』についてお聞きしたいと思います。伊東四朗さんが戸塚校長に成り切った熱演ぶりを見せています。伊東四朗さんは特別に役づくりのためにスクールを訪ねたなどあったんでしょうか?

戸塚 いや、映画のロケ地とスクールの合宿地が同じところやったからね。キャストもスタッフも私らの朝の体操からずっと一緒に過ごしておったようなもんよ。私はスクールの指導があるから、映画の監修はしてません。でも、映画に出ておる役者は、やっぱりみんなプロやね。「あっ、これは誰や」というのが、映画を観たらすぐわかる。伊東さんもそうやね。「あっ、伊東さんがあそこにおるなぁ」と思とったら、ボクのことを観察しとったんやね。ある日、向こうから誰か歩いてきよるなぁと思ったら、歩き方が自分にそっくり。伊東さんやった。スクールのスタッフも間違えるくらいに、伊東さんはそっくりになっとったね。

――映画の中ではスクール生同士の恋愛も描かれていますが、実際のスクールはどうなんでしょうか?

戸塚 それは、あるやろうねぇ。今は小学生でも恋愛せんとおかしいぐらい思っとるからね。漫画やらマスコミに煽られてね。まぁ、スクール内での恋愛はええことよ。どういう男がモテるのか、わかるわけやからね。うちに来る子たちは自分に妙な自信を持っておるわけよ。「オレはモテるんだ」と。ちょっと女性に優しくされただけで、勘違いする。ヒドいのは精神病院で看護婦に優しくされたことを「自分はモテる」と思い込んどる。入院中の患者からラブレターをもらったとか。叱るより褒めろという教育を受けとるから、すぐに自惚れる。でも、スクールで暮らせば、現実がわかるようになる。男が10人なら、女は1人くらいの割合やから、女にモテる男は1人だけ。そこで初めて現実を知るわけよ。

――生き抜くための本能をヨットスクールで鍛えれば、当然ながら異性を愛する感情も芽生えてくるんですね。

戸塚 当然やね、それが本能やから。すべてトレーニングよ、トレーニング。

――映画の中で、卒業生を見送る伊東四朗さんが一瞬だけ淋しそうな表情を浮かべますが、すぐにスクールのスタッフに「オレは感謝されようとは思っとらん」と毒づくシーンが印象的です。戸塚校長の心情を代弁してる?

IMG_5253_.jpg引退について問うと、「教育は
名人芸じゃダメ。基本となる精神
論を残しておけば、後は誰でも
できる。体罰のマニュアルだけ、
オレが作っといてやる」と返答。

戸塚 ハハハ、私らは『金八先生』やないぞということです。子供たちのためにやっておるんであって、自分たちのためにやっとるわけやない。卒業生たちが「ありがとうございます」と慕って集まってくるのを教師が期待しとったら、手がにぶるわ。「これ以上叩くと、後から恨まれるからやめとこう」となってしまう。スクールに「将来、教育関係の仕事に就きたいので手伝わせてください」と来るのが多いんよ。じゃあ、やってみなさいと2人くらい子供を任せてみると、甘やかす。「なんで甘やかす?」と聞くと、「ボクは子供たちの喜ぶ顔が見たいんです」と言う。いい加減にせえと。それはお前がうれしいから、やっとるだけやないか。子供の将来のことを考えてやれと。そのためには今、厳しくせないかんのやと。それをマスコミは『金八先生』みたいな無責任なドラマを持ち上げる。先生が生徒によく思われたいと考えるようになったら、も~先生はおしまいよ。子供たちが「先生!」と抱きつく光景みたら、吐き気がするわ。

■都合の悪いことは報道しないマスコミの身勝手さ

――戸塚校長は最高裁で懲役6年の実刑判決を下され、静岡刑務所で収監生活を送ったわけですが、収監前と出所後でヨットスクールでの指導方法に違いはありますか?

戸塚 体罰をちゃんとしてやれなくなった。ちゃんとした体罰がないので、己を知らない思い上がりや怠け者はすぐふてくされてしまい、さぼるので効果が上がらなくなってきている。

――現在のスクール生の人数は10人前後。全盛期は100人以上いたそうですが、多すぎたんでしょうか?

戸塚 いや、人数が多いのは問題ではなかった。今のやり方じゃ、採算が成り立たんもん。それなのにマスコミはアホやから、入学金(315万円)が高いとか口出しよる。特に朝日新聞やね。だから、朝日の記者が来たらいつもイジメてやるんよ。「お前、人権の定義を言ってみい」「民主主義の定義はできるか?」とね。「はぁ」「はぁ」と言うだけで答えられんよ。「わからんのやろ?」と言うと「いや、そんなことはない」と認めようとせん。男らしくない。そんな民主主義の定義もできんヤツが、「民主主義を守れ」とか言いよる。

――今春劇場公開されたドキュメンタリー映画『平成ジレンマ』(東海テレビ制作)では、再開されたヨットスクールに集まる生徒たちの高齢化が進んでいることに触れていました。ニートや引きこもりの高齢化問題を校長はどのように考えていますか?

戸塚 う~ん、ニートの高齢化問題は一体誰が責任をとるの? 朝日新聞が、ニートをみんな雇ったらええんやない? ニートの数は64万人。この国にニートの面倒を看る力はもうないよ。小学校や幼稚園くらいの頃から、厳しく教育せんと効果はないんよ。でも、その小学校の教育もダメになっとる。小学生のときに、論理的能力、人間力、行動力の3つを身に付けさせれば、あとは自分でその能力を出せるようになり、それが社会性、人間性になる。それなのに、その人間性の中でいちばん大事な生命力、生きようとする力が無くなってきとる。それと進歩する力。この2つがないと一生ダメや。死んでもいいと考えとったら、何もできんよ。イジメられて自殺するような子は、みんなで「情けないヤツ」と罵ればいいんよ。

――自殺する勇気があるなら、イジメに立ち向かえと?

戸塚 いや、勇気もないんよ。死ぬことへの抵抗がなくなっとるんよ。最近は自殺者が増えとるやろ? 精神病の薬を飲んどるヤツは、すぐ自殺する。年間3万人以上が自殺して、その中の7割が精神科から渡された薬を飲んどる。抗うつ剤を飲むと、躁になりかけたときに自殺することがある。精神科を神様みたいに崇めるのは間違い。2年前、(向精神薬を服用していた)うちの女生徒が合宿所の屋上から飛び降り自殺したとき、集まったマスコミに話したんや。「お前らは真犯人が誰か知っとるやろ? でも真犯人が誰かと言うと都合が悪いんやろ? スポンサーやから」と。「だから、オレを犯人にして、スポンサーに褒められたいんやろ?」とね。どっこも、そのことは記事にせんかったよ。

――真犯人は製薬会社ということですか?

戸塚 うん、それと精神科やね。最近、よく精神科がマスコミに広告を出しよる。危ないと感じ始めとるんやろ。それなのに、マスコミは自分のところの利益が上がることしか考えん。日本はマスコミに潰されるよ。マスコミは精神科医と製薬会社をもっと正しく調べろ。

――28年の歳月を経て、映画『スパルタの海』が劇場公開される意義をどう感じているのか最後に教えてください。

戸塚 いろんな団体から圧力を掛けられて、映画が上映中止に追い込まれたときに、どうにかしようとするのが民主主義やないの? それが映画を上映中止に追い込んだヤツらが民主主義を名乗っとる。言論の自由、表現の自由とマスコミはいつも言っとったんやないの? それなのに、自分たちがやったらいかんということを自分たちがやっとる。それが日本のマスコミよ。

――朝日新聞にどのような映画評が載るか楽しみですね。

戸塚 映画評してくれればええけどなぁ。どんなふうに評されても構わんのよ。一方的に偏らなければね。この映画が公開されることで、教育論争が再燃することが望ましいのよ。考え直す、チャンスよ。体罰を禁じたここ数十年の教育は何だったんだと。今の教育の現状をどう打破すればええのか、『スパルタの海』がみんなで論争する起爆剤になればと思うよ。
(取材・文=長野辰次)

『スパルタの海』
原作/上之郷利昭 監督/西河克己 出演/伊東四朗、辻野幸一、平田昭彦、小山明子、横田ひとみ、山本みどり、牟田梯三、原ひさ子
配給/アルバトロス 10月29日(土)より全国順次ロードショー
http://spartatraps.blogspot.com

●とつか・ひろし
1940年愛知県出身。名古屋大学工学部在学中にヨット部の主将として活躍し、75年には「太平洋単独横断レース」に優勝。76年に戸塚ヨットスクール開校。当初は将来のヨットマンを育てるためのジュニアスクールだったが、情緒障害児の不登校が治ったことをマスコミが取り上げ、全国から情緒障害児が一斉に集まるようになった。80~82年に訓練生2名が死亡、2名が行方不明となる”戸塚ヨットスクール事件”が起き、「体罰は教育」と主張する戸塚校長をマスコミは叩いた。83年6月に傷害致死の疑いで逮捕。2002年に最高裁から懲役6年の実刑判決が下される。06年に出所。私立の幼稚園、小学校を設立することをライフワークに掲げている。

戸塚ヨットスクールは、いま――現代若者漂流

いま。

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最終更新:2013/09/11 12:14
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