「紳助はスケープゴート」暴力団との不適切な関係は吉本の体質だった!?
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
第1位
「山口組元幹部が実名ですべて明かす『紳助に頼まれて処理したこと、紳助邸でのバーベキューパーティ、そして浜田のこと』」(「週刊現代」9月17日号)
第2位
「加藤シルビア『みのもんたも知らないラブラブ(ハートマークです)半同棲生活』」(「フライデー」9月16日号)
第3位
「徹底研究 がん保険 損か得か」(「週刊現代」9月17日号)
「週刊現代」の編集部の人間と話した。東日本大震災と原発・放射能の記事で落ちかけていた部数が戻り、右肩上がりになったが、どこでも放射線量を測りだし、ネットでもどんどん流れるようになって、部数はまたきつくなってきていたそうだ。
そんなところに島田紳助の引退スキャンダルが起き、干天の慈雨でどこも完売に近かったようだ。だが、これ以上新たなスキャンダルが出て来ないと、これからが大変だと話してくれた。
好調と言われている「現代」でさえきついという言葉が出てくるのだから、他誌はもっと大変だろう。昔は、部数はともかく広告だけは常にトップを走っていた「週刊文春」も、広告が入らないと嘆いているようだ。
その中で”孤高””唯我独尊”の「週刊ポスト」だが、今週の巻頭特集に「天皇家の健康法」をもってきたのには首を傾げざるをえない。なんでこれが「全国民必読!」なのであろう。
昭和天皇がお気に入りだった「カルグルト」という乳酸飲料を紹介している。脱脂乳を濃縮したものを殺菌し、乳酸菌を加えて発酵させ、その後、香料と砂糖シロップを加え攪拌してつくるらしい。なるほど体によさそうではあるが、そもそも天皇が食べるものは栃木県の「御料牧場」で生産され、厳重に管理されているのだから、素材からして、われわれ庶民の口に入るものとは違うし、健康状態についても主治医が常にチェックしているのだから、歴代天皇が長寿なのはご同慶の至りではあるが、庶民の健康法にどう取り入れていいのか、読み終わって困惑するだけである。
「ポスト」の目次の右トップは櫻井よしこの「外交無策と日本の孤立」、その横には小林よしのりの「国を想い、国を守る真の保守とは何か」がある。「ポスト」を発行している小学館には「SAPIO」という隔週刊誌がある。同じような論調の雑誌が2誌はいらないと、私は思うのだが。
このところ「がんブーム」と言っていいほど、毎週各誌こぞってがんについての特集を組んでいる。今週も「『がん治療実績』完全データの正しい読み方」(「ポスト」)、「食道癌で旅立った『団鬼六』の『手術は、しません』」(「週刊新潮」)、「現代」は「がん保険 損か得か」、がんで亡くなった「わが父 原田芳雄の生と死」、「男女別 治りにくいがんランキング」と三本もある。
放射線被曝でがんが増えるという恐怖心から、がんに対する関心が高まっているとも考えられるが、それにしても最近、どうしてこれほど多いのだろうか。がんを含めた「いい病院のみつけ方」なる企画は「週刊朝日」の売り物企画だが、他誌も負けじと力を入れてきている。
自分ががんだと分かった時、治るかどうかが最大の関心事ではあるが、がんと診断されてからすぐに出てくる問題は治療費であろう。そこで転ばぬ先の杖の「がん保険」に加入しておこうと探してみると、「診断給付金」「手術給付金」「入院給付金」「抗がん剤治療特約」など保障が細分化されていて、どれに入ったらいいのか分からない。
最近は、保険の加入や取りやめの相談に無料で乗ってくれるところもある。私も先日、駅前にある相談所に行ったが、予約を取るのが大変なことと、最初の相談だけで2時間以上かかることから、時間の余裕をもって行かなくてはならない。
相談員に、どうして無料でできるのかと聞いたところ、一部の保険会社が出資しているのと、相談に来た人が保険に加入してくれれば、その会社から手数料をもらえるのだという。
話は戻るが、最近は高齢化とがん検診の精度が高まったため、保険会社もなるべく払わなくていいようにいろいろ”細工”をしているから気をつけたほうがいい、と警告している。
ある例では、がんと分かったとき400万円の給付金が出る保険に入っていたのに、上皮内がん(早期がん)だったため出なかったそうである。
それに厚労省の医療費抑制政策のため、入院期間は短縮されてきていて、入院1日あたりいくらという保障は意味がなくなってきているそうだ。私が聞いた相談員も、今は一般的に2週間ぐらいで病院から出されてしまうと言われた。
また先進医療特約というのも、実際に使われているのは0.006%に過ぎないそうだ。なぜなら医者が説明しなかったり、入っていることを忘れてしまったりしている人が多いからなのだ。
それではどんながん保険がいいかと言うと、「がんになったときにまとまったおカネをくれる保険が一番いい」(保険コンサルタント後田亨氏)そうである。つまりシンプルに診断給付金をもらえる保険がいいのだ。
今は早期がんでも対象になり、診断されれば何度でも給付金が払われるという保険商品がいくつも出てきている。誌面の中でも紹介しているから、どうしようかと考えている人は読んでみるといいだろう。
第2位はTBSの朝の顔、みのもんたの『朝ズバ!ッ』を入社3年で射止めたシンデレラアナ・加藤シルビアに半同棲しているカレがいるという「フライデー」の記事。
読む限り、ふたりはこそこそ隠れて会っているわけではないようだ。カレは同じTBS社員で30代前半の向井理似のイケメン。
シルビアはカレのマンションからほど近いところに住み、チャリンコをこいで行き来しているのがほほえましい。腕を組んで歩いたり、スーパーで買い物をしたりと甘い時間を謳歌しているようだ。このまま結婚へゴールインすることは間違いないと思われるが、日本中で一番注目される女子アナという職業ゆえに、これまでも「悲恋」は掃いて捨てるほどあった。この恋の結末がハッピーエンドで終わるのか、まだまだ目が離せないようである。
紳助騒動は、本人が姿を見せないために、取材する側はネタ探しに四苦八苦だ。今の段階で、暴力団との不適切な関係に絞られ、中でも紳助の所有している不動産取引に暴力団が関係していたのではないか、その際、カネが暴力団側に流れていないかが焦点になってきているようだ。
今回、「現代」がインタビューしたのは片岡昭生元山口組山健組本部長。彼が山健組のナンバー3だったとき、紳助と親しい極心連合会の橋本弘文会長がナンバー2にいて、親しかった。
話はそれるが、昨夜(9月5日)講談社ノンフィクション賞の授賞式があり、その後、銀座のイタメシ屋で2次会が行われた。
私はそっちの方へ出席したが、今回の受賞作は、角岡伸彦氏の『カニは横に歩く 自律障害者たちの半世紀』(講談社)と森達也氏の『A3』(集英社インターナショナル)である。角岡氏は神戸新聞を経てフリーになった。森氏は元々テレビのドキュメンタリー出身のノンフィクション・ライターで、今回は、長年追いかけているオウム真理教の集大成とも言える本で、教祖麻原彰晃の裁判についての疑問と批判を込めた力作である。
この話を持ち出したのは、この記事の筆者が角岡氏だからだ。元々被差別問題に詳しいライターだが、そのつながりからこのスクープにつながったのだろうか。
片岡本部長は、10数年前に橋本会長から頼まれ、紳助が右翼団体と揉めて困っている件を解決したというのだ。
その後、紳助から誘いがあり、自宅のバーベキューパーティーに呼ばれて風呂にも入った。
その片岡本部長は今回の引退に関してこう言っている。
「もともと極心の会長(橋本会長のこと=筆者注)は吉本が好きや。お笑いが。紳助と極真の会長の関係を示す写真や手紙があるということがマスコミで報じられてますが、身近におったからわかる。あれ、嘘やおまへんわ。事実やと思う」
したがって、紳助が会見で「これぐらいはセーフやと思った」発言には「マンガやね」と一笑に付す。
注目は、吉本の人気お笑い芸人ダウンタウンの浜田雅功のトラブルも収めたと発言していることだ。
2006年6月26日、フジテレビ制作の『HEY! HEY! HEY!』で、司会の浜田がゲストの宇多田ヒカルに対して、倉木麻衣は宇多田のパクリではないかという趣旨の発言をしたらしい。それに対して倉木の所属事務所はもちろんのこと、右翼団体もテレビ局周辺に押しかけ抗議して騒動になった。
吉本から暴力団関係者とみられるイベント会社の社長に話があり、その社長から聞いて、片岡本部長がその件も収めたのだという。しばらくたってから吉本の林裕章社長(当時)から招待があって、神戸のクラブで一対一で会ったという。
この記事の核になるところはその程度だ。羊頭狗肉の感なきにしもあらずだが、このインタビューをするのに相当な苦労があったことを「現代」の関係者から聞いているから、まあいいか。
この証言から浮かび上がってくるのは、私が前々から言っているように、紳助だけではなく、暴力団との不適切な関係は吉本興業全体の体質の問題であることが、透けて見えることだ。
これこそ紳助騒動の裏にある核心である。そのところをどこまで追及できるか。テレビ・新聞にできないことをやる週刊誌の取材に期待するところ大である。期待感も含めてこの記事を今週のグランプリ!
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
倉木麻衣と右翼のカンケイの方が気になるけど。
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