プロレス黄金時代よもう一度! マンガでたどる『想ひ出のいかすプロレス天国』
#本 #プロレス
佐々木といえば、佐々木希ではなく佐々木健介だったあのころ、特にプロレス好きでなくとも、男子ならば一人ぐらいはお気に入りのレスラーがいたのではないでしょうか。ちなみに筆者は毒霧を吐く覆面レスラー、グレート・ムタが好きでありました。しかしながら、その正体が武藤敬司だったとは長い間知りませんでした。サンタクロースの正体が父親だったような、軽い喪失感があったのを記憶しております。
シャイニング・ウィザードをマネして足をつった日もひと昔。『想ひ出のいかすプロレス天国』(鹿砦社)は、戦後~1990年代に活躍したプロレスラーたちを振り返った一冊だ。漫画家のマエオカ・テツヤ氏がイラストとマンガを、ライターのブルドッグ打越氏が文章をそれぞれ担当し、各レスラーの思い出をコミカルに語っている。力道山や馬場猪木、鶴藤長天(ジャンボ鶴田・藤波辰爾・長州力・天龍源一郎)らスター選手はもちろん、外国人レスラーに女子プロレスラー、陰日なたになって活躍したバイプレーヤーたちも余すことなく紹介しており、さながらプロレスラーのアルバムを見ているようだ。三沢光晴や橋本真也、ラッシャー木村など、鬼籍に入った選手も数多く、涙を誘われる。
しかし、けっこう酷な描かれ方をしているレスラーもいる。
仲野信市は80年代後半~90年代前半、全日(全日本プロレス)で活躍した選手だが、「仲野の印象を私はあまり記憶していない。(中略)技にしても存在感にしても記憶に薄い。これは私だけの印象だと思うが……。」(本文より)と、仲野選手にはあんまりな描かれ方。ほかにも「残念なレスラー」「名前負けした選手の一人」と散々に言われるレスラーも。
だが、そのようないちファンの視点から見た率直な感想がこの本の最大の特徴であり、街頭テレビの前にたむろしているような、プロレス黄金時代の熱気をわれわれに伝えてくれる。あのころ、確かにプロレスは、最高にイカしていたのだ。
(文=平野遼)
●マエオカ・テツヤ
1967年和歌山市生まれ。大阪総合デザイン専門学校卒業後、デザイン会社、出版社を渡り歩き、89年芳文社新人ギャグ漫画展に入選、「月刊まんがタイム」誌にて「フクザツ・the・乙女心」で漫画家デビュー。漫画家稼業の傍ら専門学校数校で講師を務め、サブカルチャー誌、アウトドア誌、情報誌等でエッセー、コラムも執筆。98年に和歌山へUターン後、二代目桂枝曾丸と出会い「創作落語」や「和歌山弁落語」の制作を開始。2006年よりテレビ和歌山『@あっと!テレわか』に出演し「瓦版屋のてっちゃん」として活躍、同年7月に出版した和歌山弁の解説書『持ち歩きペラペラ和歌山弁』はベストセラーになる。現在、上記以外には大阪アニメーションスクール特別講師でもある。
●ブルドッグ打越
本名・打越保、和歌山県出身、1949年生まれ。現エンタイトル出版編集長。編集の傍らライターとして活躍。
いかすぜぃ。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事