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「自家用車に”ひばく”とスプレー書きも」嫌がらせを受ける東電若手社員の本音

 東日本大震災で発生した福島第一原発事故の被害の広がりを受けて、東京電力への批判は強まるばかりだ。命の危険も顧みず必死に事態悪化の阻止を試みる現場作業員たちが英雄視される一方で、東電本体は事故への対応の悪さが指摘され、下請け作業員の被ばくには監督責任を問う声が上がっている。

 東電は傘下に原発運営会社があり、さらに現地のメンテナンス請負会社、メーカー系列の派遣技術者などが複雑に絡んでおり、同じ東電関係者でも立ち位置には開きがある。

 かたや英雄、かたや悪者……都内に勤務の東電社員は被災地から遠く離れていることから後者と見られやすく、在京の東電社員には嫌がらせが相次いでいるという。

「近隣の住民の方々から”早く解決しろ”とおしかりを受けた」というのは、都内勤務の東電社員Aさん(29)。現在、社員寮に住んでいるが、日増しに風当たりが強くなり、ついには駐車場の愛車にスプレーで「ひばく」と書かれる目にも遭ったという。

「寮に出入りするだけで鋭い視線が通行人の方から飛んできます。真夜中に”おい、さっさと福島に行け”という怒鳴り声も聞こえました」(Aさん)

 先日、この寮は「東京電力」と書かれた社員寮の表札をビニールテープで覆い隠し、社名のないプレートと差し替える事態となった。

「石を投げられたとか、寮を出るところを記者に待ち伏せされたとか、そんな話も聞いたので、現在は埼玉県にいる親せきの家から通っています」とAさん。

 渋谷にある社宅に住む東電社員Bさんは、実際に記者の直撃を受けたというが、その内容は福島の原発ではなかったという。

「社宅の建設を施工したのが西松建設だと知っているか、と聞かれました」

 西松といえば裏金問題で騒がれた渦中の業者。東電の原発事業にも深く食い込んでいたと見られており、すでに一部マスコミは原発事故に端を発して見えてきた”電力の闇”にも探りを入れ始めているようだ。仮に利権がらみの問題の一つでも浮かび上がってくれば、東電に対する世間の目は一層厳しくなるだろう。

「正直、ノイローゼ気味です。会社を辞めたいけど、いま辞めたら”あのとき逃げたやつ”と一生、十字架を背負うことになってしまう。病院へ通うにも批判がありそうで、しばらくは耐えるしかないです」(Aさん)

 また、東電の社員を名乗る人物がブログに「これまで電力を使っていた国民が被害者面するのはおかしい」という内容の日記を書いたことで批判を浴び、ブログを閉鎖するなど東電内部と国民の間の温度差は日増しに広がっていくように見える。

 未曾有の大事故と東電上層部の不手際によって、末端の技術者や若手社員に対しても三次被害、四次被害ともいうべき状況が発生し始めているようだ。放射線という見えない恐怖への不安が消えないうちは、東電に対する風当たりが弱まる気配はない。怒りと憎しみの連鎖を少しでも早く止め、復興への足がかりを整えるためにも、官邸と東電には一日も早い事態の収拾を望みたい。

原発と地震―柏崎刈羽「震度7」の警告

教訓は、生かされない。

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最終更新:2013/09/17 21:02
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