「伏線王に俺はなる!?」ワンピース非公式ガイドブックの金字塔『ワンピース最強考察』
#本 #マンガ
いま日本で最も売れているマンガと言えば、「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載中の『ワンピース』をおいてほかにない。「海賊王」を目指すモンキー・D・ルフィとその仲間たちの冒険を描いたこの作品は、コミックス累計発行部数が2億冊を突破する空前の人気マンガとなっている。
もちろん、売れているのは単行本だけではない。アニメのDVD、フィギュア、ぬいぐるみなどの関連商品も、軒並み好調な売れ行きを見せている。そんな中で、『ワンピース』の世界を変わった角度から掘り下げた1冊の本が密かな話題を呼んでいる。それは、『ワンピース最強考察』(晋遊舎)。Twitterやブログを通した口コミなどでじわじわと評判を呼び、10万部を突破するベストセラーになっている。
この本は、マンガ批評サイト「ヤマカム」管理人ほか3名で結成されたワンピ漫研団による本格的なワンピース研究書。作品内にちりばめられた伏線の数々を読み解き、『ワンピース』の世界をより深く楽しむための非公式ガイドブックである。
「海賊王ロジャーは、最後の島ラフテルに上陸さえしていない!?」「サー・クロコダイルは女だった!?」「10人目の仲間は『バーソロミュー・くま』である!?」など、ワンピースファンならば耳を傾けずにはいられない鋭い分析と大胆な仮説が盛りだくさん。もちろん、それぞれの考察がきちんとした根拠に裏打ちされているため、十分な説得力がある。『ワンピース』の読者がこの本を読めば、隠された伏線をたどりながら改めて作品を一から読み返したくなるのは間違いない。
そもそも、私はこのマンガの一読者として、一般的な『ワンピース』ファンの本作品に対する持ち上げ方に大きな不満があった。多くの人は、『ワンピース』を一種の感動物として語りたがる。このマンガは、友情をテーマとした冒険活劇であり、とにかく泣ける場面が多いんだ、と。それはそれで確かに間違ってはいないのかもしれない。だが、これだけ奥行きのある世界観を持った濃密な作品を、「友情」だの「感動」だのといった凡庸な切り口だけで語り尽くしてしまうのは、あまりにもったいないのではないだろうか。
私が思う『ワンピース』の本当の魅力は、緻密に構築された作品世界の壮大さにある。キャラクターの性格、能力、衣装などのデザインから、それぞれの国家、組織、民族にいたるまで、設定は細部まで練り上げられ、それらが有機的につながって1つの世界を構成している。だからこそ、そのシステムの一部をほのめかすようにして提示される数々の「伏線」が、物語をいっそう魅力的なものにしているのだ。
『ワンピース最強考察』の著者によれば、作者の尾田栄一郎こそは「伏線王」である。作品内にこれでもかというくらい大量に伏線をはりめぐらせて、それをひとつひとつ丁寧に回収していく手腕は、ほかに並ぶ者が見当たらないほどだ。まだまだ未回収の伏線や未解決の謎はたくさん残されているし、最後の最後には「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」という特大級の謎も控えている。本書は、「伏線王」が創造した壮大な作品世界を深く知るための手引きとして最適の1冊だ。
(文=ラリー遠田)
「本編が100倍楽しくなる」そう。
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