「宇多田でさえも苦戦……」ベスト盤も売れ行き不調で音楽業界が困窮
#音楽 #宇多田ヒカル
年末商戦の時期が近づくと、各レコード会社がこぞって発売するのが有名アーティストのベスト盤だ。安価な制作費で確実なセールスが見込めることから、CD不振が続く昨今では「ベスト盤頼み」という風潮も台頭。一部のリスナーからは不評を買ってもいた。
しかし、ここにきてベスト盤の売れ行きが落ちているという。11月末に発売された宇多田ヒカルのシングルコレクション『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2』(EMIミュージックジャパン)が初動20万枚台という低調な数字であったことが、音楽業界に衝撃を与えている。
「宇多田ヒカルの場合は無期限休養前、さらに新曲5曲入りという話題性もあったにも関わらず、大きな数字につながりませんでした。今年はいきものがかりのベスト盤がミリオンを記録したのが目立つくらいで、どの作品も思ったほどのセールスが出せていない。各社は”確実に売れるタマが見込めない”と頭を痛めています」(事務所関係者)
一方、事前の宣伝活動をほとんど行わなかったにも関わらず、Mr.Childrenの新しいアルバム『SENSE』(トイズファクトリー)は初動50万枚超えを記録し、ミリオン達成が確実な情勢だ。
「テレビ・ラジオ出演や雑誌媒体への露出を重ねた上で作品をリリースする、という従来の宣伝手法を用いなかったのは、プロデューサーである小林武史氏の意向が大きいと言われています。メディア露出を得るのと引き換えに広告を出すこれまでのレコード会社のやり方に批判的な小林氏は、ファンを確実につかんでいればCDは売れると考えている。今回の成功は、有力アーティストの今後の宣伝活動に影響を与えるでしょう」(前出の関係者)
ほかにも、嵐の『僕の見ている風景』(ジェイ・ストーム)の大ヒットなど、ベスト盤よりもオリジナルアルバムの健闘ぶりが目立った2010年。
その背景には、YouTubeなどの無料ストリーミングメディアの発展で、既発曲を改めて購入するユーザー側の動機が弱くなっていることもあるようだ。
「オリジナル作品の低落傾向は変わりませんが、ベスト盤にも音源プラス一工夫が求められる時代です。その結果、海外アーティストのカバー集を特典で付けるなどのケースが増え、現場からは『結局、制作費がかかってベストのうまみがなくなった』とボヤく声も聞えてきます」(レコード会社宣伝担当)
ベスト盤が以前のようなドル箱ではなくなった現在、各レコード会社は新たな”定番商品”の開発を迫られている。
(文=柴田勇気)
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