海賊版『容疑者Xの献身』が暗示する電子書籍の不確かな未来
#出版 #iPhone #神林広恵 #iPad #電子書籍
伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ギョーカイの内部情報を拾い上げ、磨きをかけた秘話&提言。
作家の村上龍自ら、電子書籍制作・販売会社を設立するなど、何かと話題になっている電子書籍だが、早々に海賊版が出回る、という事件が勃発した。
しかもこの海賊版小説、人気売れっ子作家の東野圭吾『容疑者Xの献身』(文芸春秋)だったというから驚きだ。しかも「App Store」で……。
「App Store」はアップルが運営するiPhone、iPadなどに向けるアプリのダウンロードサービスだが、そこにベストセラー作品『容疑者Xの献身』アプリが登場したのは11月初頭だった。値段は115円。だがその内容は、不審だらけのものだったという。
「誤字脱字だらけで、不自然な字間や、文字が追加されている箇所もあったようです。値段も安すぎる。不審に思った購入者が、版元の文芸春秋に問い合わせをしたようです。しかし、文芸春秋側も全く関知していない。そんなアプリがあることも、この問い合わせで知り、大騒ぎになった」(出版関係者)
もちろん、作者の東野もあずかり知らないという完全な無断販売・海賊盤だったのだ。急遽、販売停止の処置を要請したという。
厳格と言われる「App Store」でさえ、こんな事態が起こる。今後、楽天や角川グループなど、日本企業も次々と電子書籍業界に参入が予定されているが、こうしたチェック機能がどこまで働くのか。
電子書籍では、著作権や印税の配分を巡り議論があるが、しばらくは、こうしたさまざまなトラブルが起るのでは、と思わせる一件であった。
(文=神林広恵)
犯人は誰だ!?
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