在日ファンクが目指すのは女の子に「キャー」と言われる”アイドル的”ファンク!?
#音楽 #インタビュー #在日ファンク
SAKEROCKのフロントマン・ハマケンこと浜野謙太が、トロンボーンをマイクに持ち替えジェームス・ブラウンばりのシャウトを響かせるバンド、在日ファンク。今年の1月には初のフルアルバム『在日ファンク』(P-VINE Records)を発表し、夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010」をはじめとする音楽フェスやライブイベントに出演し、大きな話題をさらった。
そんな彼らが満を持して発表する新作は、本日10月20日より3カ月連続でリリースされるコラボレーションシングル。アルバムリリース時のインタビューでは、「SAKEROCKとの距離感に悩んでいて、アイデンティティ確立のため在日ファンクが必要だった」とバンド始動の経緯について自信なさげに語ったハマケン。およそ1年が経過して、その心境はどう変わったのか。また、ドラマ『モテキ』(テレビ東京系)への出演など、役者としても注目を集め始めた現状について話を聞いた。
──アルバム『在日ファンク』のリリースから1年近く経ちました。以前はまだまだ不安要素も多かったようですが、今はずいぶん状況も変わったのでは?
浜野謙太(以下、浜野) そうですね。BOSE(スチャダラパー)さんと以前話した時に、「いろいろやってみないと分かんないよ」ってアドバイスをもらったことがあって。確かに、実際やってみると、SAKEROCKの活動もリラックスした気持ちでできるようになったんですよ。
──SAKEROCKでも在日ファンクでも同じ「フロントマン」という立場ですが、やはり歌を歌う在日ファンクとインストバンドのSAKEROCKでは感覚が違う?
浜野 最初、在日ファンクでは面白い部分を出しちゃいけないと思ってたんです。でも「面白いところがない」とか「ツッコミどころがないから見ない」とかネットで批判されて(笑)。そうなると、SAKEROCKとの区別が必要だと思ってたけど、やっぱりどこかに面白い部分は自然と出ちゃうもので。最近は、だんだん在日ファンクなりの面白味の出し方も掴めてきたし、無理に縛らないことで、逆にSAKEROCKでも奇跡的なプレーというか、踊りというか……あ、立ち居振る舞い?(笑)ができることもあったりして。相乗効果がありましたね。
──10月、11月、12月と3カ月連続でコラボレーションシングルがリリースされますが、これはどういう経緯で決まったんですか?
浜野 以前ライブで(サイトウ”JxJx”)ジュンさん(YOUR SONG IS GOOD)とかサイプレス上野君(サイプレス上野とロベルト吉野)とコラボレーションをやって、それがすごく楽しかったんですよ。そういう楽しいことが続いて、1回のライブのために新曲作っちゃえるぐらいドンドン曲ができてた時期に、レーベルの担当さんが「3枚連続シングルとかどう?」ってポロッと言ったんで、即答で「それいいッスね!」みたいな。採算的には危ない気もするんですけど(笑)、「言ったからにはやりましょうよ」って。
──ゲストの3人はすぐに決まったんですか?
浜野 何度も話し合いをして、加護亜依さんとか野村沙知代さんっていうアイデアも出たんですけど(笑)、顔なじみのジュンさん、上野君ときて、最後にROY君(THE BAWDIES)が出てきたら、すごくカッコいい3連チャンでビシっとまとまるんじゃないかと。確固たるイメージを持ってる先輩方だから……ROY君は年下ですけど、アーティストの格としてはたぶん先輩なんで(笑)、そういう先輩方に在日ファンクの型作りを手伝ってもらったような、おすそわけしてもらったような感じがありますね。だからズルいんですよ(笑)。卑怯な3連チャンなんです。
──アーティストとして”格上”だとおっしゃるTHE BAWDIESを、どのようにに見てきましたか?
浜野 なんでこんな渋い音楽を今やってんだろうなって(笑)。そこは俺も共通するところなので、一緒にファンクをやっても全然大丈夫だと思ったし、気持ちもわかってもらえるだろうなと。「あいつによろしく(在日ファンクとサイトウ”JxJx”ジュン)」と「BAY DREAM ~FROM課外授業~(在日ファンクとサイプレス上野)」はもともとあった曲ですけど、「Escape(在日ファンクとROY)」は、さっき話したドンドン曲を作ってた時期にできた新曲で。かたちにするのは結構難しかったけど、在日ファンクの曲を作る上で何か新しい扉を開けたような、大きな手応えがありました。
──ちなみに、「Escape」のカップリング「京都」は以前からSAKEROCKのライブで披露されていた曲ですよね? SAKEROCKでやると、あまりに爽やかなソウル風味の歌モノで「異質過ぎて笑っちゃう曲」みたいな扱いでしたけど、在日ファンクがやるとちょっと意味合いが変わって聴こえてしまう。なんか、すごく真面目なんですよね。世間が持つ「ハマケン=面白おかしい人」みたいなイメージが揺らいで、どっちが本当のハマケン像なのかわからなくなるというか。
浜野 あー、うれしいッスね。1stアルバムの取材の時、よく「ZAZEN BOYSがカッコいい」っていう、俺が言わなくてもみんなが知ってるようなことを言いまくってたんですけど(笑)、ZAZEN BOYSの音楽って、まさにカッコいいのか笑っていいのか分かんない世界観だと思うんですよ。それが理想なんです。だから「ハマケン=面白おかしい人」ってイメージは在日ファンクではなくしたい。「京都」はマジメにくだらない曲にしたかったから、わざわざストリングスまで入れましたし(笑)。
──でも「面白ハマケン」が好きだった人は、これで離れてしまうかもしれないですよね。
浜野 それはもう、1stアルバムを出した段階で十分離れたと思います(笑)。瞬発力で面白いことをするっていうのもいいんですけど、考え抜いて構築して、結局くだらないみたいな……。そういうのを在日ファンクでは目指しているので。
──この3連チャンシングルが発表されることで新しいファンも増えると思いますが、それによって今までより忙しくなると思うんですが。バンドだけでもたくさん抱えてるのに、さらにタレント仕事、役者仕事と……。忙しくなることへのプレッシャーはないですか?
浜野 いやー、ありますね。
──”業界視聴率”が非常に高いと言われた『モテキ』(オム先生役を怪演)への出演は、役者業の部分で大きな転換期になり得るのではないかと思います。さらに来年には、映画『婚前特急』に準主役で出演するんですよね?
浜野 実は『婚前特急』は『モテキ』より前に撮ったんですけどね。前からSAKEROCKのライブを見てくれていた前田弘二監督がオーディションに呼んでくれて。
──おぉ! ちゃんとオーディションを勝ち抜いて(笑)。
浜野 そうなんスよ。吉高由里子さんの事務所もよくOK出しましたよね(笑)。
──じゃあ今回は「呼ばれたからにぎやかしで出てまーす」的なものではなく、結構マジメに”俳優”をやってるんですね?
浜野 偶然舞い込んだ話ではあったんですけど、たまたまハマリ役で……。まあ、役者業と言っても、たまたま続いただけなんですけどね。この後なんの仕事も来てないですから(笑)。
──とはいえ、今をときめく吉高由里子の相手役ですから!
浜野 (急にどや顔で)いやー、吉高はなかなか良かったですよ。
──うわっ、すごい上から目線(笑)。でも本当に「音楽どころじゃない」ぐらいのことになる可能性も、なくはないですよね。最終的に、浜野謙太はどこへ行こうとしているのでしょうか?
浜野 それがどんどん分かんなくなってて……。
──ははははは。悩みがさらに深まってるじゃないですか。
浜野 『婚前特急』の試写会に行って「俺……役者で売れちゃうかも」とか思いながら、帰ってきて在日ファンクのシングル作ってると「俺は何をやってんだろう」って気持ちになるし。
──いろんなことをやりながらも「でも俺はミュージシャンだから」みたいな気持ちはないんですか?
浜野 うーん……。でもミュージシャンってちょっと貧乏臭いような気がしてて(笑)。役者とかをやるやらないにかかわらず、専業ミュージシャン的なノリはあまりよくないんじゃないかと。だからそんなに……あ、アイドルにはなりたいですけどね。3連チャンシングルも関ジャニ∞みたいでしょ?
──アイドル!? え? ちやほやされたいの?(笑)
浜野 まぁ、ぶっちゃけそうですね。
──あえてライバルを挙げるなら誰? 星野源君とか?
浜野 いや、星野君はライバルではないですねー。ライバル……ライバルかぁ……。あ、戦うってことだったら、もう「敵」だと思っているものはいっぱいあります!(笑)誰にも伝わらないと思うんですけど、「Escape」はサムライブルーに対抗した曲なんですよ。「サムライになんかなれないぞ。侍になりたいけどなれないのが、むしろジャパンなんじゃないか!」と思ってるから、そこは戦っていきたい。
──結構巨大なものを敵認定しますね(笑)。
浜野 メンバーすらそんな曲だと気付いてないですけど(笑)。でもとにかく、貧乏くさくない生き方をしたいですね。1970年代、最盛期を迎えた頃のJBのどこに憧れるかっていうと、突き詰めるとたぶん音だけじゃないんですよ。
──あの貧乏くささのない、リッチな感じ。
浜野 そうです。リッチな、余裕の塊みたいな。オーサカ=モノレールの中田亮さんが言ってたんですけど、JBは今でこそ「通が聴く音楽」になってるけど、当時は中学生くらいの女の子が「キャー」って言うような大衆音楽だったんだよって。俺はむしろその、大衆音楽のほうに行きたいんですよ。たぶん。
(構成=臼杵成晃/撮影=後藤秀二 )
●在日ファンク
新しい時代のディープファンクバンド。高祖ジェイムズ・ブラウンから流れを汲むファンクを日本に在りながら(在日)再認識しようと、音、思想、外観あらゆる面から試みるその様は目を覆うものがある。しかし、それこそがまさにファンクなバンドなのだ。公式HP<http://www.zainichifunk.com/>
【ライブ】
10/24 NESTフェスティバル@渋谷O-EAST
10/31 多摩美術大学芸術祭@多摩美術大学 八王子キャンパス(入場無料)
10/31 自主法政祭@法政大学市ヶ谷キャンパス(入場無料)
11/21 ZAZENBOYS vs. ZAINICHIFUNK@新宿 ロフト
あいつによろしく
10日20日に発売されたがかりのハマケンが番組MCとしてタッグを組んだ盟友サイトウ”JxJx”ジュンをゲストに迎えたコラボシングル第1弾。カップリングには2人の番組から生まれた「スペシャボーイズ・ザ・ワールドのテーマ」も収録。また、11月17日発売のコラボ第2弾「BAY DREAM~FROM課外授業~」にはサイプレス上野、12月22日発売の第3弾「Escape」にはROY(THE BAWDIES)が参加している。
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