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爆笑必至! ”隅におけない”会社員が作るシュールアニメDVD『むっちり村』

muchi.jpg『むっちり村』(ポニーキャニオン)

 『むっちり村』――微妙なイヤらしさをはらむこれは、6月2日に発売されたシュールアニメDVDのタイトルである。制作者は谷口崇。脚本、作画、声優、編集、すべての工程をほぼひとりで担当。数年前から、同名の個人サイトでアニメを公開し、さまざまな賞も受賞している。唇のシワや、指先の爪まで描かれているリアルでやや不気味なタッチの絵が特徴で、一度見たら忘れられないインパクトがある。

 このDVDに収録されているアニメは『悪いのを倒せ!! サラリーマンマン』、『茂雄はハンサム』、『森の安藤』、『名探偵ゴードン』、『荒くれ純一の涙』、『むきだしの光子』の6本。再生するとさっそく1本目のアニメが始まる……のではなく、これら6本の手描きアニメーションができるまでを、ドキュメンタリー仕立てで紹介しているのだ。


 「……当時はCGばかりが持てはやされる時代でした。でも、手描きアニメのような素晴らしいものを絶やすわけにはいかない、そういう気持ちでしたね」と、自身を振り返る初老のアニメーター”谷口崇”氏。氏の生い立ちや、手描きアニメの道を志したきっかけ、アニメを作っていく上での苦労、作品が世間から受け入れられず頭を抱える仲間のクリエイターたち、そして苦難を乗り越えての飛躍――いかにもベタな”ドキュメンタリー番組”に乗せて、初めて作ったアニメ「悪いのを倒せ!! サラリーマンマン」が始まる。

muchi03.jpg「悪いのを倒せ!! サラリーマンマン」(c)谷口崇/ポニーキャニオン

 「悪いのを倒せ!! サラリーマンマン」は、突如現れた”悪いの”という名前の悪役を、正義のヒーロー”サラリーマンマン”が倒すという物語。”悪いの”という悪役の名前からセリフ回しまで、最後まで徹底的にふざけきっているのが魅力だ。棒読みでも、噛み気味でも、それがひとつの味となって作品を支えている。

muchi02.jpg「森の安藤」(c)谷口崇/ポニーキャニオン

 DVD内のドキュメンタリー風番組で、飛躍のきっかけとして紹介されるのが、3本目・4本目の作品「森の安藤」と「名探偵ゴードン」。筆者イチオシでもある『森の安藤』の見どころは、前述の「悪いのを倒せ~~」と同様、シュールなノリで物語が進むにも関わらず、”森を大切に”という壮大なテーマを扱っているミスマッチな点。また、森を守ってもらえて喜ぶ動物たちが、最後にミュージカル調で歌うシーンがあるのだが、この歌が無駄に上手いところも見逃せない。歌っているのはもちろん谷口崇氏。この予想外の歌唱力、なかなか隅におけない。

muchi05.jpg「名探偵ゴードン」(c)谷口崇/ポニーキャニオン

 そして、5本目の「荒くれ純一の涙」、6本目の「むきだしの光子」はともに大ヒット、初老”谷口崇”氏は「アニメーターを目指す未来の子ども達に、CGアニメだけでなく、手描きアニメという選択肢を与えることができた……まだまだ私も、これからの若いアニメ作家さん達に負けないようにしないと(笑)」とドキュメンタリー風番組は感動的に幕を閉じる。

 こうして”谷口崇”氏は、世間で知られる手描きアニメーターとして成功を収めた……ということになっている、このDVDの中では。そう、『むっちり村』を制作した本物の谷口崇氏は、1985年生まれ、20代の会社員である。たとえそれが感動ドキュメンタリー風番組でも、徹底的にふざけきって作り込む若き谷口崇氏は、やはり”隅に置けない”。また、これだけ「手描きアニメの良さを伝えたい」というテーマでドキュメンタリーが作られているにも関わらず、DVD特典映像として収録されているのは”クレイアニメ”。手描きの手の字もない。隅から隅まで人をおちょくったような『むっちり村』、夜中に人知れずこっそり観て、クスッとしたい作品だ。
(文=朝井麻由美)

■たにぐち・たかし
生年:昭和60年
好きな食べ物:稲森いずみ
職業:会社員
ブログ<http://mc.adkda.net/>

むっちり村

むっちりむっちり。

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最終更新:2010/06/11 15:00
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