「ルールよりも面白さを伝えたい」 すごろくや店主が語るボードゲームの魅力
#ゲーム
東京・高円寺の駅前にあるボードゲーム専門店「すごろくや」。店内に所狭しと並ぶボードゲームとカードゲームは、常備約400種類! 品揃えの珍しさはもちろん、今や多くのお店が行う「twitter割引」を、最初に提案・実施したお店としても話題となり、多くのメディアに取り上げられた。また、最近ではプライベートで利用しているという伊集院光や水道橋博士が、ラジオや雑誌でお店を紹介。その効果もあり、ますます客層に広がりを見せているという。
そんな「すごろくや」を4年前に立ち上げたのが店主の丸田康司さん。ゲームといえばデジタルが主流の今、なぜアナログなゲームにこだわるのだろうか? 丸田さんに話を聞いた。
――そもそも、なぜボードゲーム専門店を始めようと?
丸田康司さん(以下、丸田) 元々、私は「MOTHER2」「風来のシレン」などのテレビゲームソフトを作っていたんです。”ゲーム本来の良さ”みたいなものがどんどん失われていく流れの中で、業界やマーケットに限界を感じていて……。そんな時に会社の人員削減を受けて、これを機会に自分で何かしようと思い立ったのが始まりです。
――昔からボードゲームに詳しかったんですか?
丸田 それほどでもないです。ただ、テレビゲームを作っていたときに、石原恒和さん(現・株式会社ポケモン代表)の下で、大山功一さん(「ポケモンカードゲーム」生みの親)などと一緒に働いていて。その2人がカードゲームやボードゲームが好きだったので、影響を受けましたね。
――「すごろくや」は、店員さんたちの商品の説明の上手さがネットでも話題になっています。約400種類もの商品のうち、どのくらいのゲームを実際にやられてるんですか?
丸田 95%くらいですね。ボードゲームって、ルールを見ただけでは面白さが分からないんですよ。売り上げ上位の『ごきぶりポーカー』も、最初に説明だけ聞いた時は「面白いのかなあ……」って思いましたけど、やってみたらこれが♪ 「めちゃくちゃ面白いけれど、面白さが全く知られていないもの」がウチの商品コンセプトなので、ルールじゃなくて、何が面白いのかをちゃんと伝えられるように工夫しています。
――お店のゲームは、ほとんどが海外のものですね。全ての商品に日本語のルールブックや、遊び方DVDなどが付いているので、初心者の私にも安心です。
丸田 海外から指定して取り寄せてるようなものに関しては、お店で翻訳して、ルールブックを作ってます。
――ただ売ってるだけじゃないんですね。
丸田 「すごろくや」を作ったのは、”売る”だけが目的じゃないですから。もちろん新しいゲームも作りたいですが、その前に日本にはボードゲームが浸透していませんし。電車を作る前にレールを敷くことからやらないとダメだと思っているので、まずは10年、20年スパンでこのお店のスタイルを広めていきたいと思います。
――ところでボードゲームの本場といえば、ドイツのイメージがあります。お店の商品もドイツのゲームが多いようですね。
丸田 ドイツのゲームはルールがすごくよく出来てるんです。その理由の一つとしては、無駄を嫌い、意味のあることを突き詰める、あのお堅い国民性ですよね(笑)。
――ドイツでは、今もボードゲームがメジャーなんですか?
丸田 いや、それがヨーロッパにもちゃんとしたボードゲームの売り場が無いんです。例えるなら、日本のジグソーパズル売り場みたいな感じ。ただバーッと商品が置いてあるだけで、店員はゲームの内容を知らない。先日、ドイツの有名なボードゲームメーカーの社長さんがお店に来たんですけど、「すげえなこの店! こんな店ドイツにもねーよ!」って言って帰っていきましたから(笑)。
――本場のお墨付きなんですね! あの……ふと思ったんですが、ボードゲームってまず仲間を集めることが必要ですよね。友達を誘って、もし「今どきボードゲーム~?」って反応をされてしまったらどうすれば……?
丸田 やっぱり異性は大事なんじゃないかなあ。
――異性ですか!
丸田 野郎が野郎を誘っても限界があるよね(笑)。だから男の子と女の子で遊びましょうっていうのがいいんじゃないでしょうか。ボードゲームって、もちろんやって楽しいというのもあるけど、もっと別の視点からも利用して欲しいと思います。異性を誘う理由にしてもいいし、お母さんを喜ばすでもいいし。
――なるほど! 何か楽しくなってきました。
丸田 よくお客さんに「一番面白いのはどれですか?」って聞かれるんですけど、誰にでも合う万能のゲームなんて一個も無いんです。お店に来たら、どんな環境で遊ぶのかを、店員にどんどん教えてくださいね。
(取材・文=林タモツ)
★すごろくやさんに、おすすめのゲームを教えてもらいました!★
●個人的にはイチオシだけど、
なぜかウケないゲーム
「消えた宇宙船をさがせ!」
(ドイツ)3,990円/
3~6人用、所要30分
カードをめくり、指定された色の宇宙船に自分の宇宙飛行士と副操縦士を乗せて、みんなが目をつぶっている間に家の中のどこかに隠す。それを繰り返し、宇宙船がなくなったら、今度はカードに描かれた宇宙船を探しにいく。宇宙船を無事に帰還させられれば、得点となるゲーム。面白いのに、言葉だけではうまく伝えられないらしい。
<http://sugorokuya.jp/blog.cgi?1309>
●ビジュアルがすごい! ゲーム
「アラカルト」(ドイツ)6,300円
3~4人用、所要 30~45分,
自分のフライパンの中でいろいろな料理を完成させるべく、選択したレシピに沿うように、巧みな手さばきで調味料を振り入れていくゲーム。中央に並べられた料理のレシピカードを選び、その料理を一品ずつ完成させ、得点を争う。”牛の尾ありのまま仕立て””フィデロ・カストロ風朝食”など、なぜかブラックな料理がラインナップされている。フライパンでパンケーキをひっくり返せないと得点がもらえない、という変わったルールも。
<http://sugorokuya.jp/blog.cgi?1417>
●世界観が魅力のゲーム
「ディクシット」(フランス)4,700円
3~6人用、所要30分
語り部役が不思議な情景が描かれた84枚のイラストカードを一枚引き、その絵柄を連想させる「印象ワード」を他の人たちに伝える。その「印象ワード」の元になっているカードをみんなで推理し、得点を稼いでいくゲーム。自分と他の人のモノの見え方の違いを楽しめる、不思議な感覚のゲーム。手の込んだイラストにも注目。
<http://sugorokuya.jp/blog.cgi?1222>
●上級者向けのゲーム
「アグリコラ」(ドイツ)8,900円
1~5人用、所要120分(1人あたり30分9
農地を耕し、畑で小麦や野菜を育て、羊や牛などの牧畜を行なうことで自分の農地の豊かさを競う、mixi「サンシャイン牧場」のようなゲーム。ルールが多くて小難しいものの、カードは全部で300種類あり、プレイする度に出てくるカードがまったく違うので、何度でも楽しめる。同作家のカードゲーム「ボーナンザ」(1,800円)もおすすめ。
<http://sugorokuya.jp/blog.cgi?1083>
●すごろくやオリジナルゲーム
「イチゴリラ」(日本)500円
2~6人用、所要10分,
裏面にイラストと数字が描かれたカードをめくっていき、同じイラストのカードを描かれた数字の枚数だけ揃えるともらえる、新しい神経衰弱ゲーム。絵面は全部で10種類。似たようなイラストのひっかけもあるので注意! 店主が作ったオリジナルゲームで、ドイツで発売が検討されているとかいないとか。
<http://sugorokuya.jp/blog.cgi?1301>
●すごろくや
高円寺発、世界の名作ボードゲーム・カードゲームをさわって買えるお店。400種以上のゲームを取り扱っている。
営業::11:00~夜8:00
定休日: 火曜・水曜
場所:JR高円寺駅 すぐ目の前
< http://sugorokuya.jp/index.html>
だけじゃないんです。
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