ストップモーション×3D 人形たちが乱舞する箱庭世界『コララインとボタンの魔女』
#映画 #洋画
『アバター』の特大ヒットにより、一般的にもかなり浸透した3D映画。奥行きを感じさせる斬新な映像体験が話題となっているが、『アバター』で3D映画の魅力に開眼した人には、こちらも3D映画の『コララインとボタンの魔女 3D』(公開中)をオススメしたい。
今なお人気の高い『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)のヘンリー・セリック監督の最新作で、『ナイトメアー』同様、人形を1フレームずつ動かして撮影したストップモーション・アニメ。11歳の好奇心旺盛な少女コララインは新しい家に引っ越したが、両親は仕事ばかりで彼女の話も聞いてくれず、退屈な日々を送っていた。そんなある日、部屋の中に不思議な小さな扉を発見した彼女は、その扉の先に広がる、現実世界とそっくりなもうひとつの世界を探検する。その世界には、コララインが理想とする優しくて楽しい両親がいたが、たったひとつだけ違うのは、2人の目がボタンになっていること。次第に、その世界の居心地の良さの虜になっていくコララインだが、実はその世界は悪い魔女が作り出した幻想世界。魔女はコララインをその世界に引きとめようとするのだが……。アニメといっても、子ども向けで終わらないのがセリック監督流。序盤こそかわいらしさが漂う世界観だが、魔女や別世界の正体が明らかになるにつれ、『ナイトメアー』を彷彿とさせるダークなトーンに包まれていく。
ストップモーション・アニメといえば、人形が生きているかのように動く、どこか不思議な様子が魅力でもあるが、本作の人形の動きは驚くほど滑らか。たとえば、『ナイトメアー』の主人公ジャックの表情は15通りしかなかったが、今回の主人公コララインは、より細かな表情の変化を表現するため、合計で20万通り以上の表情が用意されたのだとか(35秒間に16通りの表情がある計算)。それだけに、喜怒哀楽の表情の変化ひとつとっても滑らかで、普通のCGアニメを見ているような、人形アニメだということを忘れてしまう見事な出来栄えだ。
もちろん、人物以外の建物やセットもすべて作り物。その世界を動き回る人物たちが3Dで見えるのだから、まるで人形たちが普通に動き回る世界がスクリーンに広がっているような、あるいは人形たちが動き回る箱庭をのぞきこんでいるような感覚になる。3D技術の賜物である作品だが、それ以前に映画の世界観そのものの出来が素晴らしいというのもある。いくら3D技術で立体的に見えても、その世界や物語が魅力的でなければ、ただの奥行きのある映像でしかなくなる。ちなみに、そんな魅力的な世界観やキャラクターのコンセプトデザインを手がけたのは、日本人イラストレーターの上杉忠弘。2月6日に発表された”アニメ界のアカデミー賞”と呼ばれるアニー賞で、日本人初の美術賞を受賞している。
ちなみに、3D映画は今後も続々と登場する。『アリス・イン・ワンダーランド』(4月17日公開)、『タイタンの戦い』(4月23日公開)、『トイ・ストーリー3』(7月10日公開)といった超大作も3Dになる予定で、あの『ハリー・ポッター』の最終章となる『ハリー・ポッターと死の秘宝』(前編は11月公開)も3D映画になるというウワサもあるから、なおさら3D映画から目が離せない。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)
『コララインとボタンの魔女 3D』作品情報
<http://eiga.com/movie/54438/>
『コララインとボタンの魔女 3D』ヘンリー・セリック監督&上杉忠弘 インタビュー
<http://eiga.com/buzz/20100218/7/>
『コララインとボタンの魔女 3D』吹き替え声優・榮倉奈々&劇団ひとり インタビュー
<http://eiga.com/buzz/20100217/16/>
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