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日本全国「ヘンな駅」をめぐるガイドブック、ここに誕生!『珍駅巡礼』

chineki.jpg『珍駅巡礼』(著:西崎さいき/イカロス出版)

 去年の年末に、NHKのBS1で『にっぽん木造駅舎の旅』を一挙放送していて、「やっぱり木造の駅は郷愁が漂っていて和みますね」なんて、なんのヒネリもない感想を抱きながらボケーっと見続けてしまった。こうした木造駅舎は老朽化が進んで改築を余儀なくされ……みたいな話をするまでもなく、時代の流れとともに希少価値と歴史的価値が付加されて、いま注目されているわけだ。近年ちょっとしたブームになったいわゆる「秘境駅」も似たような価値観の上に成り立っているといえるだろう。

 さて本書は、日本全国に9,700あるといわれる駅のなかから、「どうしてこうなった?」と思わずツッコミたくなる「ヘンな駅」を、JR線にあるものを中心に221カ所厳選、著者の西崎さいき氏自身が撮影した数々の写真とともに紹介したものだ。選考の基準は、上述したような「消えゆく鉄道遺産」的なノスタルジックな視点ではなく、ずばり「おもしろさ」。テレビ番組でいうなら『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)に近いだろうか。

 たとえば、本書の表紙にもなっている、青森県つがる市にあるJR五能線の「木造(きづくり)駅」の壁面には、なんと高さ17.3mの土偶が張りついている。しかも、列車の到着時間が近づくと目が光りだすというギミック付き。同市内の亀ヶ岡遺跡から出土した土偶をアピールしたものだそうだが、率直な印象を述べると、すごくこわい。あるいは岡山県久米郡美咲町のJR津山線「亀甲(かめのこう)駅」。駅名は駅付近にある「亀甲岩」に由来しているらしく、駅舎の屋根も亀の甲羅を模してデザインされている。ここまでならちょっと気の利いた意匠で済まされるところを、あろうことか妙に生々しい巨大な亀の頭がその屋根から突き出ていて、建造物としての違和感がどうにも拭えない。はたまた「忍者の里」として有名な滋賀県甲賀市、JR関西本線「甲賀(こうか)駅」では、駅舎のあちこちにチープな忍者のトリックアートが描かれていたり。

 これらは町の名物を宣伝した、いわば町おこしを目的とした「珍駅」たちだ。どれも一歩間違えれば名物どころか笑い種になってしまいそうな代物だが、その悪ふざけと紙一重な危うさをはらんだ異様なインパクトは、僕らの「駅」の概念をぶち壊すには十分だろう。そんな「狙った」駅舎もあれば、自然環境によって生まれた「珍駅」もある。

 島根県邑智郡邑南町、JR三江線「宇都井(うづい)駅」は山間を抜ける高架線上に造られた駅で、ホームは地上30メートルの高さにある。そのため駅舎は5階建てのビルに相当するタワー型をなしており、利用者は116段の階段を昇り降りしなければならない。逆に、群馬県利根郡みなかみ町のJR上越線「土合(どあい)駅」は通称「日本一のモグラ駅」。下りホームは新潟県との県境にある新清水トンネル内に設置されているため、地上の改札からホームへは計486段もの階段を約10分かけて移動しなければならないというから大変だ。

 といった具合に全国各地の型破りな駅舎が目白押しで、「すげーなー」とページを捲っていたところ、僕(都内在住)も行ったことのある駅が載っていた。神奈川県横浜市鶴見区、JR鶴見線「海芝浦(うみしばうら)駅」で、ここは、ホームがすぐ海に面しているという特異な立地がポイント。駅自体は電機メーカー・東芝の敷地内にあり、かつては東芝社員以外は駅の外に出られなかったが、現在は敷地の一部が「海芝公園」として解放されている。こんなふうに関東近郊、あるいは名古屋や京都など大都市部からでもわりと気軽に行ける「珍駅」もフォローしているのが、「駅鉄」初心者にはうれしいかもしれない。
(文=須藤輝)

●西崎さいき
1965年岡山県生まれ。81年、高校入学時から駅舎撮影をはじめる。国鉄赤字路線の廃止予定駅を中心に撮影をすすめ、98年『国鉄・JR廃止駅写真集』を自費出版。2000年、ホームページ「さいきの駅舎訪問(http://ekisya.net/)」を開設。2006年、JR全駅訪問達成し、ホームページ上にJR全駅掲載。現在、『ワンダーJAPAN』(三才ブックス)に「珍駅訪問」を連載中。ほか各媒体に駅舎画像提供多数。

珍駅巡礼

“がっかり”づくしです。

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最終更新:2010/02/08 21:00
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