年間最大ヒットは『ROOKIES』 邦画強しの映画界、2010年はどうなる!?
#映画
2009年の映画界は、2月の米アカデミー賞で『おくりびと』が外国語映画賞を受賞して社会的にも大きな話題になったほか、3月に深キョンのドロンジョ様が話題になった実写版『ヤッターマン』がヒット。5月公開の『ROOKIES-卒業-』が興行収入85億円を上げ、年間を通しての最大のヒット作になり、6月の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』や8月の『サマーウォーズ』などアニメも健闘。9月には『20世紀少年』の最終章が当たり、12月にも『ONE PIECE FILE STRONG WORLD』が来場者プレゼントのコミック0巻を求めて観客が殺到し、劇場が大活況を呈するなど、やはり邦画が元気だった1年と言えそう。事実、毎週月曜日に発表される興行通信社調べによる国内興行ランキングでも、12月21日までの52週のうち邦画が1位に立ったのが32週なのに対し、洋画は20週だ。
一方、洋画の雄たるハリウッド勢は、『ベンジャミン・バトン/数奇な人生』『チェンジリング』などオスカーレースに絡んだ作品が興行的には苦戦しつつも、さすがのクオリティを見せたほか、そのアカデミー賞で作品賞を受賞した『スラムドッグ$ミリオネア』はインドを舞台にした作品という点で、今後のハリウッド映画の新たな方向性を暗示。その希望に満ちた疾走感溢れる内容も、好意的に迎えられた。夏には『天使と悪魔』『ターミネーター4』『トランスフォーマー/リベンジ』『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『ナイト ミュージアム2』といった人気シリーズの最新作が続々と登場。
一昔前なら50~100億円を狙えるポテンシャルを秘めた作品群だが、『ハリポタ』を除いて軒並み50億円を割る成績だった。一時期は、200~300億円まで届いたその『ハリポタ』ですら80億円に留まり、『ROOKIES』に敗れるという状況が長引く洋画不況をあらためて表している。年末に満を持して公開されたジェームズ・キャメロン監督12年ぶり最新作『アバター』への期待が大きい。
そんな中、6月にマイケル・ジャクソンが急逝したことにより、急きょ10月に公開された『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』が興収50億円に迫る勢いで再上映中で、マイケルの存在とともに忘れられない1本になった。また、ハリウッド勢以外では前年に公開された『Part I』に続いて、4月に公開されたアジア合作『レッドクリフ Part II-未来への最終決戦-』が前作越えの55.5億円の大ヒットで気を吐いた(年末までに50億円を超えた洋画は『ハリポタ』『レッドクリフ』の2本のみ)。
さて「来年の話をすると鬼が笑う」とは言うが、そんな2009年も終わりをつげる今、2010年はどんな映画が公開されるのか? 主だった話題作をザッと上げてみよう。
まず年明け早々、1~2月に公開されるいわゆる正月第2弾作品には、モーリス・センダックの名作絵本を映画化した大人向けファンタジー『かいじゅうたちのいるところ』(1月15日公開)、急逝から1年が経つヒース・レジャーの遺作『Dr.パルナサスの鏡』(1月23日公開)、『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督最新作『ラブリーボーン』(1月29日公開)、山田洋次監督10年ぶりの現代劇『おとうと』(1月30日公開)、名匠クリント・イーストウッド監督の『インビクタス/負けざる者』(2月5日公開)など、大人向けの大作が目立つ。
3月には米アカデミー賞があることから、その頃には受賞を狙った作品が続々と出てくる。『シカゴ』のロブ・マーシャル監督の新作で、オスカー受賞者が勢揃いの豪華ミュージカル『NINE』(3月19日公開)のような華やかなものから、小品ながらも現時点(2009年末)でオスカー候補の有力勢『ハート・ロッカー』(3月6日公開)、『マイレージ、マイライフ』(3月20日公開)なども、この時期を狙っての公開。そのほかディズニー久々の2Dアニメ『プリンセスと魔法のキス』(3月6日公開)、アーサー・コナン・ドイルが生んだ名探偵を主人公に、新たな冒険活劇として描く『シャーロック・ホームズ』(3月12日公開)、前編がヒット中の『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』(4月17日公開)、ティム・バートン監督とジョニー・デップが7度目のコンビを組む『アリス・イン・ワンダーランド』(4月17日公開)、こちらも名コンビ、マーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオの『シャッター アイランド』(4月公開)あたりも要注目だ。
初夏から夏にかけては大作が続々と投下され、市場がもっともにぎわうシーズンのひとつ。2010年の夏休み映画は、ハリウッド勢では6月に『アイアンマン2』『セックス・アンド・ザ・シティ2』などが公開予定で、7月に入るとピクサー・アニメの最新作『トイ・ストーリー3』、アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイアクション『ソルト』のほか、歴史的大ヒット作にして傑作『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督の最新作で、レオナルド・ディカプリオと渡辺謙が対決することも話題の『インセプション』などが見逃せない存在に。邦画では、実写邦画興収ナンバーワン記録を保持するシリーズの7年ぶり新作『踊る大捜査線 THE MOVIE 3』(7月3日公開)と、スタジオジブリの最新作『借りぐらしのアリエッティ』(夏公開)が2強と言えそう。他にも『クレヨンしんちゃん』『河童のクゥと夏休み』で支持される原恵一監督作『カラフル』(夏公開)もあれば、小栗旬初監督作『シュアリー・サムデイ』(夏公開)もその出来栄えが注目される。
秋以降に関しては、さすがにまだ公開時期が未定のものが多いが、映画・ドラマ双方で成功したシリーズの最新作『海猿3』(9月18日公開)、よしながふみ原作コミックの映画化『大奥』(10月1日公開)、ハロルド作石による音楽漫画の映画化『BECK』、人気ドラマの初映画化『SP the motion picture(仮題)』といった邦画勢がすでに秋公開として発表されている。冬には11月にいよいよシリーズ完結となる『ハリー・ポッターと死の秘宝(前編)』や、12月には2011年正月第1弾映画として「宇宙戦艦ヤマト」実写版で木村拓哉が主演の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』、村上春樹の大ベストセラーを松山ケンイチ主演で映画化する『ノルウェイの森』あたりが話題になることは必至だ。
以上に挙げたものは2009年末の時点ですでに公開が決まっている、ほんの一部のみ。年明けには各配給会社がラインナップの発表を行う(年末にすでに行っている会社もあり)ため、まだまだ話題作は続々と出てくる。特に洋画に関しては、これから国内での配給の有無、公開時期が発表されていくので、楽しみに待ちたい。また、今回は全国公開規模の作品が中心の紹介になったが、もちろんいわゆるミニシアター系の映画にも見ごたえのある作品はたくさんある。2010年も素敵な映画に出会えることを願いたい。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)
2010年公開予定作品
<http://eiga.com/movie/coming/201004-201012/>
感動ポイントも面白さも、まったくもって……。
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