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DVD『こまねこのクリスマス』発売記念インタビュー

ぬいぐるみに命を吹き込む”映像の魔法使い”合田経郎 秒間24コマの世界

komaneko001.jpg(C)アミ・ドゥ・こまねこ

 愛くるしいネコのぬいぐるみがくるくると動き回り、「ニャニャニャー」という鳴き声と、微妙な表情の変化だけで豊かなドラマ世界を生み出し続ける”こま撮り”アニメシリーズ『こまねこ』。まるで生きているかのようなキャラクターたちはその実、スタジオに組まれたミニチュアセットのなかで、人の手によって少しずつ位置や姿勢を調整され、ひとコマひとコマ丹念に撮影されている。

 そんな『こまねこ』の監督を務めるのは、CMディレクター出身のアニメーション作家・合田経郎。NHK-BSのマスコットキャラクター「どーもくん」や、宇多田ヒカルの「ぼくはくま」のPVを手掛けるなど、日本の人形アニメの第一人者として活躍する人物だ。

 東京都写真美術館での展示のために作られた短編アニメから、長編の劇場公開作品『こま撮りえいが こまねこ』を経て、続編『こまねこのクリスマス~迷子になったプレゼント~』完成へと至った合田監督に、その作品世界の魅力と制作現場の苦労を余すとこなく語っていただいた。

──最初に監督が人形アニメや”こま撮り”に目覚めたきっかけは、何だったんですか?

合田経郎(以下、合田) もともと僕はCMディレクターをしていたんですが、「どーもくん」の制作で”こま撮り”に関わるようになり、この世界の面白さに目覚めたんです。

gouda_tsuneo.jpg合田監督。

──最初に「どーもくん」を作ることになったときは、どんな印象でしたか?

合田 最初は「”こま撮り”なんて嫌だよ、かったるいよ!」と思っていました(笑)。でも、実際に作ってみたら、面白くて仕方がない。初めて作ったのに、なんだか子どもの頃に味わったことのあるような、懐かしい気持ちになったんです。

──「どーもくん」は今、アメリカですごい人気だと聞きます。

合田 そうなんです。アメリカで、セブンイレブンと「どーもくん」のコラボ商品を出していただいて。先日アメリカに行き、各地のセブンイレブンをまわったんですが、店内ポップでもアピールしてくれていたり、挨拶に行ったらお店の人たちが喜んでくれて、嬉しかったですね。「どーもくん」は僕にとって長男のような存在なので、とても光栄に思います。「どーもくん」のスタッフが、”こま撮り”を最初に教えてくれた僕の師匠なんですよ。

──さて、12月2日にDVDとなって発売される『こまねこのクリスマス~迷子になったプレゼント~』について伺います。今回の新作は、クリスマスが舞台ですが、このテーマを選んだ理由は?

komaneko002.jpg(C)アミ・ドゥ・こまねこ

合田 やはり”こま撮り”はとても手間がかかるもの。なので、できる限り、作品として長く生きてほしいという思いがあるんです。それで、テーマも風化しないものがいいと考えました。そういう意味では、クリスマスという題材は、親子代々引き継がれて行くものだから、やってみたいと思ったんです。

──今回は18分間の作品になっていますが、撮影期間はどれくらいだったんですか?

合田 こま撮りでは、1秒間の映像を作るのに、24コマを撮る必要があります。今回は、ほぼ毎日朝から晩まで撮影して3カ月かかりましたね。1日で撮れるのは5秒ほどで、それでも、時には動きを見た後にNGを出さなければいけませんからね。監督としては、それが辛くて……。

──気が遠くなりますね(笑)。

合田 スタッフの集中力を維持し、和やかに撮影を進めるのが僕の仕事でした。キャラクターも映像もすべて手作りなので、作る人が「面白い」と思って取り組んでるかどうかで、作品の仕上がりがまったく違うんです。

──神経を使いそうですね。作る上で力を入れたところは?

合田 人形の世界だからこそ絵空事にしたくない、感情面ではリアルにしたいと思って。そういう意味では、こまちゃんの感情表現には力を入れています。とはいえ、人形なので、動かせる表情が、まゆげやまぶたなどしかなくて、とても苦労しました。

──セルや実写に比べて、制作予算的にはどうなんでしょうか。

合田 まあ……確かに、すごくかかります。撮影も時間がかかり、スタッフの拘束時間も長いですし……。

──なるほど。では、大変な思いをしながらも、監督が”こま撮り”を続ける理由はなんですか? どこに魅力があるのでしょうか。

合田 手作りなので1つひとつに味わいがある。この味わい深さは、人形アニメや”こま撮り”でしかできないものではないかと思うんです。そして、人形アニメは、いつまでも古くならないと僕は信じています。たとえば、CGなど現代の最先端の技術は、50年後に見たらどうなんだろう? と。

──海外では、ニック・パークの『ウォレスとグルミット』がアカデミー賞など数々の映画賞を受賞し、ストップモーション・アニメが再び脚光を浴びていますが、ご覧になっていますか?

合田 ええ、最初見たときは、すごい衝撃でした。ああいうクレイ(粘土)アニメや人形アニメって、もともと日本では「アートアニメ」と呼ばれていて、ちょっと敷居が高い存在だったんです。でも、ニック・パークはそこに映画的な要素を入れて、純粋に誰もが楽しめるひとつの作品を作りあげた。その姿勢や完成度に、とても衝撃を受けましたね。

──では最後にメッセージをお願いします!

合田 敷居が高くない、かといって、子どもっぽいものではない、その中間をいくような人形アニメをこれからも作っていきたいです。今回の作品は、クリスマスの切なくハッピーな話。家族、恋人、誰か大切な人と見てほしいですね。
(取材・文=乾千乃)

ごうだ・つねお
1967年、東京都生まれ。日本映画学校卒業後、CMディレクターとして活動し、03年に株式会社ドワーフを立ち上げてアニメーション作家として独立。「どーもくん」「こまねこ」をはじめとするハートフルな作風で多くのファンを持つストップモーション・アニメの第一人者。

こま撮りえいが こまねこのクリスマス ~迷子になったプレゼント~
DVD通常版:3,990円(税込)
DVD-BOX〈初回限定生産〉:7,140円(税込)
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
12月2日発売
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最終更新:2009/11/29 03:22
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