トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > お笑い  > M-1新世代の登竜門 MBS『漫才アワード』優勝は吉本興業5年目の「span!」
お笑い評論家・ラリー遠田の緊急報告

M-1新世代の登竜門 MBS『漫才アワード』優勝は吉本興業5年目の「span!」

mbs_main.jpg高校生1000人による審査で優勝者が決定する『新世代漫才アワード』

 8月30日、大阪・松下IMPホールにて、高校生1000人が審査員を務める漫才コンテスト「第7回MBS新世代漫才アワード」の決勝大会が開かれた。

「MBS新世代漫才アワード」は、大阪の毎日放送が主催するお笑い賞レース。芸歴による参加資格の制限などもなく、若手からベテランまで幅広い層の芸人が参加できるのが大きな特徴である。過去の優勝者には、笑い飯、NON STYLE、アメリカザリガニといったM-1でもおなじみの実力派漫才師が名を連ねている。

 今年の2次予選を勝ち抜いた12組の芸人の中から見事優勝の栄冠に輝いたのは、結成6年目の若手漫才コンビ・span!。パワフルな漫才で高校生たちのハートをつかみ、賞金100万円を手にした。

 お笑い賞レースは、審査方式によって大きく2つの種類に分けられる。すなわち、プロの芸人やお笑い業界人が審査するものと、アマチュアの一般人が審査するものである。前者の代表例が「M-1グランプリ」「R-1ぐらんぷり」であり、後者の代表例が「MBS新世代漫才アワード」「爆笑オンエアバトル(チャンピオン大会)」である。

 基本的には、プロとアマとの間でお笑いを見る目にそれほど大きな違いがあるわけではない。特に、このような賞レースにおいては、アマチュア審査員の場合には、その人数を増やしたりすることで、個人的な好みによる偏りを減らして、より妥当な結果が出るような仕組みが作られていることが多い。

 ただ、そうは言っても、それぞれの賞レースには、それぞれの審査システムに合わせた対策がある程度は求められる、というのもれっきとした事実である。特に、現役高校生が審査をするという特殊な審査方式を導入している「漫才アワード」では、高校生の目線に合わせたネタ作りができないとなかなか良い結果を出すことができない。

 実際、この日決勝に進んだ12組は、いずれも見事に高校生に照準を合わせたネタを披露していた。具体的には、学校を舞台にしたり、恋愛をテーマにしたりして、若い世代に理解してもらいやすい設定を用いるということである。

 そんな「若者ウケ狙い」の試みの中でも特に効果的だったのが、格好つけてキザな台詞を言う「ナルシストキャラ」である。この威力は絶大で、そのキャラを前面に押し出していたのろしとウーマンラッシュアワーは、高校生たちの圧倒的な支持を得て決勝の舞台で快進撃を見せていた。

 だが結局、トーナメント形式の激戦を制したのは、舞台を大きく使って動きの多いシンプルな漫才を貫いたspan!の2人だった。彼らは、大会終了後のインタビューで、「自分たちは他のコンビと比べてキャラが弱いから、その分だけいろんなタイプのネタを見せるように心がけていた」と語っていた。

 キャラが弱いからネタで勝負する。この話を私はかつて、別の漫才コンビから聞いたことがある。彼らの名はNON STYLE。彼らは、自分たちのキャラが弱いことを十分自覚した上で、キャラ以外のネタの中身で勝負するという道を選ぶことで、昨年の「M-1グランプリ」を制することができた。

 span!の2人は、先輩であるNON STYLEとはプライベートでも親しい付き合いがあるという。偉大なるM-1王者の背中を見て育った彼らは、キャラに頼らずネタのクオリティーで勝負するという方法論を取り入れて、「漫才アワード」の歴史にその名を刻むことに成功したのである。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

第7回 MBS新世代漫才アワード
http://www.mbs.jp/ma/

NON STYLEにて

たしかに薄キャラ?

amazon_associate_logo.jpg

【関連記事】 『ザ・ドリームマッチ09』NON STYLE石田&オードリー若林が優勝した2つの理由
【関連記事】 「よくわからないヤツと思われたい」ピン芸人・中山功太 R-1王者の矜持
【関連記事】 「手数」と「スピード」の時代 NON STYLEが優勝した理由

最終更新:2018/12/10 19:22
ページ上部へ戻る

配給映画