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日刊サイゾー トップ > 社会  > ホンダの広告費はなぜ多い? 900億円の広告宣伝費のナゾ(前編)
マーケティングプランナー・谷村智康の<広告論考>

ホンダの広告費はなぜ多い? 900億円の広告宣伝費のナゾ(前編)

hondashacho.jpg業界全体を襲った業績不振。ホンダもご
多分に漏れず。しかも、尋常ならざる広
告費が……。(写真はホンダ福井社長)

 著書『マーケティング・リテラシー』が評判の気鋭のマーケティングプランナーが考察する「企業と広告」の今。非正規従業員の大リストラを進めるホンダの広告戦略を分析してみると、ナゾの500億円が浮かび上がった……。

 ホンダの広告費が、なぜか非常に大きい。2007年度のホンダの宣伝広告費は913億円で、トヨタと松下電器【※現パナソニック】に次いで国内第3位である(電通広告年鑑’08-’09)。業績に裏打ちされているのなら問題ないが、ホンダの乗用車の販売台数は軽自動車を含めても、トヨタの3分の1にすぎない。しかし、ホンダの広告費は、トヨタの1083億円に対して84%にも達する。

 同様に軽自動車の販売を取り扱い、年間の販売台数がほぼ同じの日産と比較してみると、乗用車の販売台数が約60万台のホンダに対して、日産は約67万台。日産の方が販売台数は一割ほど多いが、投じている広告費は396億円。ホンダの半分以下にすぎない。

 ホンダの広告費が過大なのは、販売実数との比較で見るとはっきりする。販売1台あたりの広告コストが、トヨタが約7万円、6万円を切る日産に対して、ホンダは15万円を超える。ホンダの広告費コストは他社の2倍以上かかっているのである。なぜ、ホンダの広告費はこれほど多いのか?

 これがホンダの敗因だ。見込める売り上げに対して、広告費が端から多すぎるのである。

 だが、ホンダの広告費が、かつてから割高だった訳ではない。

 販売台数が80万台を超えた02年の広告費は596億円。1台あたり約7万円と「他社並み」の広告コストである。04年までは600億円前後で変化がない。ところが、05年から跳ね上がり始め、07年までの3年間で、年間の広告予算は300億円も増えている。乗用車の販売台数が下がる一方なのにである。

 ホンダが07年に投じた広告費900億円は、かつて夢見た「国内販売台数100万台」を達成しても、まだ他社より割高である。もちろん、多額の広告費を投じてシェア拡大のリスクを取りに行った訳ではない。「100万台」は車が売れない昨今において実現困難な売上台数であり、また、ホンダ自身がその目標を現実的でないとすでに放棄している。

 つまり、現実に見込める売り上げに対して、ホンダが毎年用意している広告費は元が取れる見込みのない大きさなのである。

 しかも不思議なのは、その予算に応じた広告露出の量がないことである。エム・アール・エス社の広告出稿量ランキングによれば、自動車メーカーの広告費は、トヨタ(新聞237億円、雑誌51億円)・日産(新聞59億円、雑誌37億円)が上位2社であり、3位にランクするのはスバル(新聞広告に44億円、雑誌広告に10億円)である。ホンダの広告費は、新聞に37億円、雑誌には8.2億円。予算規模が4分の1しかないスバルより、ホンダの広告出稿は少なく、雑誌広告費に至っては、二輪車のみのヤマハより少ない。

●ホンダのあるべき広告費

 残念ながら、最も大きい金額が動くテレビ広告の出稿量データはないが、印象で買う手頃価格商品とは違い、自動車は入念な情報比較の上に買う商品なので、新聞や雑誌の過重を減らして、テレビに重点を置いたキャンペーンを実施することは考えにくい。新聞・雑誌の広告量は、キャンペーン全体を概ね反映していると見て良いだろう。すると、ホンダの年間広告費は、売上台数に対しても、メディア露出量と比べても、多すぎるのである。

 ホンダのあるべき広告総額を、事業規模が近い日産のコスト単価で試算すると、年間350億円。日本の広告ランキングで言えば、10位前後でイオンやアサヒビールと同程度となる。ホンダは、広告表現にタレントを使わないくらい質的に「堅実」であり、その量が、日本国内でトヨタ・松下並みであった形跡はない。試算から推測される金額やランキングが、ホンダの広告の印象とかけ離れていると考える消費者は少ないだろう。日産の2倍の広告費を使っていると言う話よりは、むしろ違和感がないだろう。

 では、「ホンダが使った広告宣伝費」と「私たちが目にした広告に費やされた金額」の差は推定で560億円。この巨大な差額はどこに使われたのであろうか?
後編につづく/谷村智康)

●たにむら・ともやす
広告代理店、コンサルティング会社、コンテンツファンドなどでの業務経験を持つ。既存のメディアやシステムの枠に依存するマーケティングではなく、広告費の過剰と偏りを消費者の都合に合わせて、それ自体を根底からひっくり返そうとする「マーケティング」プランナー。著書に、電通の上前をはね、グーグルの先を行く、メディアと広告をめぐるビジネスモデルを説いた『マーケティング・リテラシー~知的消費の技法』(リベルタ出版)などがある。

マーケティング・リテラシー~知的消費の技法

これからのマーケティング。

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最終更新:2009/01/09 14:24
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