「X51.ORG」主宰・佐藤健寿のオカルトとネットを巡る旅
#ネット #オカルト
スナッフ・フィルム、悪魔祓い、水棲獣、仏陀の化身、反重力物体浮遊現象……そんな刺激的な見出しが並ぶオカルトサイト「X51.ORG」をご存知だろうか。12月17日、このサイトをまとめた書籍『X51.ORG THE ODYSSEY』新装刊が発売される。「X51.ORG」の主宰者であり、本の著者である佐藤健寿氏に話を聞いた。
──まずは「X51.ORG」を開設したきっかけを教えてください。
【佐藤】 サイトを開設したのは2003年なんですが、その当時、奇妙なニュースや情報を集めたサイトがなかったんですよ。だったら自分で作ろうと。
──佐藤さんはネットでの情報収集に加えて、ご自分で現地に足を運んでの調査も行っています。
【佐藤】 サイトを作るということは、基本的には暇と根気さえあれば誰でも出来るんです。僕がサイトを始めた頃と違って、今ではすごい数のブログなんかがあるわけで、もう別に僕がやらなくても、ある程度の情報は手に入るようにもなりました。じゃあ逆にここ(ネット)に載らない情報はなにか、と考えたとき、直接現地に行くことを選んだのは自然なことだったと思います。
ただ僕はいわゆる肯定派という立場ではないし、否定派、懐疑派というわけでもない。中庸というか、普通の視点ですね。UFOとか、超能力とか、今の科学では多分解明できないものや現象も、実際にずいぶん見てきました。ただそういう現象を追いかけ続けて気づいたのは、いざ現象を前にしても、自分の意識というか考え方が、案外変わらない事だったんです。
──それは不思議な体験ですね。
【佐藤】 最近も超能力者の清田益章さんに目の前でスプーン曲げしてもらって「これは本当だ」と思いました。でもいざ実際に曲がるのを見ると、自分の中にその出来事を解釈する言葉がない事に気づくわけですよ。自分の中で解釈できなくて、ただ漠然としたショックだけが残る。信じるでもなく、否定するでもない、その曖昧な中間領域を表現する言葉が見つからなくて「事実だけど、信じてはいけない」みたいな、混乱状態に陥るんです。それでじゃあ一体「信じる」とか「正しい」って何だろうとか、根本的なことを考えるようになりました。
ただ似た事は世間にもあって、例えばテレビがユリ・ゲラーやサイババのブームを起したとき、最初は「すごい」と盛り上がるのに、ある段階を超えると急にバッシングが始まる。以前、対談させていただいた作家の森達也さんは、こういう反応について「倫理だけなく人間の根源的な抑制みたいなものがある気がする」というような事を言っていましたが、僕もそう思います。最初は好奇の目で見られても、ある段階を超えるとそれが恐怖にシフトする瞬間がある。そうすると個人でも社会でも、何らかの抑制機構が発動する。それが何なのか、またどうしてなのかが気になります。
──テレビといえば、最近あまりUFO特集を見かけなくなりました。
【佐藤】 1995年にオウムの事件が起こって「オカルトは危ない」という風潮が一気に広がりましたよね。実際、前世紀までのオカルトは、UFOにせよ、予言にせよ、どれも終末思想と直結していたと思います。ところが世紀末を迎える前に、オウムの事件が起きて、一気に抑制へ向かった。某オカルト雑誌にも麻原が登場していたし、オウムはオカルト業界と密接な関係にあったと思います。以降、メディアで一切オカルトを扱わない時期がありました。
──今は、UFO番組よりスピリチュアル番組が多いようですが。
【佐藤】 今の日本で「スピリチュアリズム」と言われるもののほとんどは、現世利益中心の分かりやすいものですよね。いろいろ崇高なことを言ってるようでも、割とリターン重視だったりして、単なる自己啓発と変わらない。
──だからこそ、オカルトやスピリチュアルを悪用して、悪質な新興宗教や霊感商法などが広まったりするのかもしれないですね。
【佐藤】 「スピリチュアリズム」も、もとは近代ヨーロッパで流行した「心霊主義」なんかがルーツです。ところが心霊主義と言うととたんにヤバい感じがする。江原啓之がもし「心霊主義を広めます」なんて言ってたら、ゴールデン枠で番組なんか出来ないですよ。そういうオブラートに包むことで、色んな情報が歪んでいるのは少なからずあると思います。
──騙されやすい視聴者をメディアが作っているとも言えます。
【佐藤】 ただ実際のところ、懐疑とか肯定とか言っても、特に日本の場合は別に信念とか主義でなく、ただのメディアリテラシーの違いだったりする事の方が多いです。結局どれだけ本を読んだか、どれだけ検索したか、みたいな。あとは英語力とか。もちろんネットによって嘘も増えましたが、最近はマスコミの一方向的な物言いが通じなくなってきたので、今後は変わってくるんじゃないですか。
──では最後に、今回発売される書籍『X51.ORG THE ODYSSEY』を通して読者に伝えたいことがあればお願いします。
【佐藤】 オカルトという部分について言えば、エリア51にしても、雪男にしても、テレビとかネットで散々見てもいまいち実感がわかなかったので、自分で行きましたが、他のいわゆるオカルト本と違って、この中には衝撃的な発見はないと思います。でも、それで構わないんです。それは案外上の世代がやって来なかったことでもあるし、僕はずっとそういう未編集の情報が知りたかった。だから読者はこれを読んでまだ不思議だと思ってくれても構わないし、現地はこんな感じなんだなあ、とか思ってくれてもいいと思います。
あとは旅という面で言えば、たとえばエリア51の写真をネットで検索して見るという事と、自分で実際に行って見る、ということは情報を「見る」とか「知る」という事においては同じですよね。でも実際には、その二つの間には途方もないエネルギーの違いがあって、それはやっぱり等価だとは思えないんです。まったく当たり前の事なんですが、今の時代では多くのことについて、ワンクリックで自分は知ったと思えたり、あるいはそれを元に物事を肯定したり否定したりしてしまうわけじゃないですか。でもその「行く」ことと、「見る」ことの間にあるものがどういうことなのかとか、そこから派生する「信じる」とか「信じない」みたいなことが、自分でも分からないから、今はとりあえず「行って見て」いる、という感じです。だからある意味では、この本はネットと旅を巡る本だとも思っています。
●『X51.ORG THE ODYSSEY』
発売 講談社
発売日 12月17日
定価 1890円(税込)
256ページ
●さとう・けんじ
「X51.ORG」主宰。UFOやUMA、奇妙な人・物・場所を追って世界を取材する。フォトグラファーとしては雑誌『TRANSIT』や『STUDIO VOICE』等の表紙撮影を手がけるなど、現在は多方面で活動中。2009年中には世界三十カ国以上の奇妙スポットを撮影した写真集の刊行を予定。http://x51.org/
美しい写真にも注目です。
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